元アイドルで音楽活動をしていた女子大生(20)が襲われたのをきっかけに、このようなストーカー事件がなぜ防げなかったのかに注目が集まっています。ストーカー被害から身を守るためにどうすればいいのか。ストーカー問題を扱う「さくら幸子探偵事務所」に所属するカウンセラー・姉崎一美氏に元探偵の筆者が取材します。

ストーカーで警察は簡単に動かない


――今世間を騒がしている女子大生刺傷事件ですが、まずは所見をお聞かせ願います。個人的には警察の対応が少し甘いのではと思う所がありますが

「ひどい事件ですね。警察に相談していたということは、ストーカー被害はすでに起きていると周囲の人が考えるべきです。本来ならライブ会場などの襲われやすい場所であれば、誰かが付き添うべきだったと思います。
警察の対応に疑問は残りますが、結局は犯行が起きてから警察に連絡が行っても間に合いません。かといって、警察もストーカー案件に割ける人員も少ないので、本格的な捜査をしたり、警護をつけるのは難しいでしょう」

――今回は元アイドルで音楽活動をしている女性が狙われましたが、多くのストーカーは元夫や元彼という関係のイメージがすごく強いです

「確かに多いですが、中には既婚者がストーカーになるケースもあります。過去に担当した案件で、不倫カップルが別れたあと、男性側がストーカーになったことがありました。二人とも家庭があり、子供もいる男女です。
男性側が別れた現実を受け入れられず、自分が死ぬとか、相手の家族を傷つけるとか、そういう脅し文句があったそうです。警察にも相談しましたが、具体的な動きが無ければ対応できないんです。できてもストーカー相手に電話をいれて注意をするぐらい。裁判所の出す接近禁止命令とは違って強制力はありません」

「被害者の自宅の近くを徘徊する加害者の映像証拠をもって、被害者女性と一緒に警察に訴え出て、ようやくストーカーをやめさせました。結局、加害者側の家族にもストーカーの事実が知られてしまい、このままでは会社にも連絡しなくてはならなくなると警察に言われて、ようやくストップしたんです。具体的な被害の証拠を持っていくことで、警察は動かざるを得なくなります」

ストーカーは自分で止められない


――姉崎さんのお話を聞いていると、なんだかストーカーになる男性も哀れに見えてきます。女性に拒絶された現実を受け入れられない辺りとか特に

「ストーカーになってしまう男性は人との関わりが薄い人に多いです。友達が少なかったり、社会的に孤独な人が多いです。それは家族があっても同じことで、疎外感を持っている人がストーカーに陥りやすいです。
恋愛に執着してしまう男性は、とにかくその女性しか居ないと思い込んでいるケースが多い。一緒にいると楽しいと言われたり、自分の存在を確かなものにしてくれていた女性に別れを切り出されると、それだけで裏切りと感じて攻撃的になったり、生きていても仕方がないと思い込むんです」

――世の中には他にも女性がいますから、別に良いのではと思うんですが

「実際には、ストーカー男性も自分のしていることに気付いている人が多いんです。けれど、誰にも相談しないせいでストーカー行為が悪化してしまうんです。本当なら、こういった人ほど早めにカウンセラーや専門家に相談していればと思います」

ストーカー被害を避けるためには?


――ストーカー被害にあわないためには、普段はどんなところに気を付けたら良いでしょうか?

「誰でもストーカーになったり、被害者になることがあります。容姿やステイタスに関係なく、どんな人でも事件に巻き込まれる可能性があります。ストーカーは元恋人や配偶者などがなってしまうことが多いので、まずは別れ方には注意を払ってください。相手がストーカー気質のある相手なら、乱雑な別れ方は危険です。できるだけ穏便に、すんなりと別れる方法を考えたり、誰かに相談するのが良いでしょう」

――相手がストーカー気質かどうかも先に確かめるべきでしょうか?

「何の連絡もしていないのにドンドンとメッセージを送ってくるようなタイプなら注意が必要です。関係を絶ったら、そのあとは連絡を取らないほうが良いでしょう。下手に反応をすると、相手がさらにストーキングに走ってしまうかもしれません」

――実際に探偵事務所でストーカー調査をするとなった場合、どんな調査を行ってくれるのでしょうか

「当社では最低20万円位から依頼を受けさせて頂いています。調査の内容はストーカー行為の証拠を押さえることがメインになるので、張り込みや尾行を駆使します。他にもストーカーと思わしき相手が居る場合には、ストーカー犯を監視して怪しい動きが無いか確認することもありますし、依頼者の周辺に張り付いて、ストーカーが現れないか尾行しつつ監視を行うこともあります」
(サナダテツヤ)

取材協力:さくら幸子探偵事務所