ライト兄弟も学んだ「初代グライダー」が現代に甦った

写真拡大 (全10枚)

飛行機を発明したライト兄弟にもインスピレーションを与えたドイツの発明家、オットー・リリエンタール。1890年代に2,000回を超える飛行実験を行った彼のグライダーが、忠実に再現されて甦った。

SLIDE SHOW 「ライト兄弟も学んだ「初代グライダー」が現代に甦った」の写真・リンク付きの記事はこちら

2/10目的はリリエンタールの業績をより理解すること。そして彼の死につながった墜落事故の原因を調べることだ。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

3/10研究者たちはまず、ドイツ北東部にあるオットー・リリエンタール博物館を訪ね、設計図を入手するところからプロジェクトを始めた。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

4/106週間かけて枠組みを制作した。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

5/10このプロジェクトのために、特別な布を発注する必要もあった。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

6/10完成したグライダーの重量はわずか約18kgで、翼の端から端までの長さは約6mだ。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

7/10チームはグライダーを、オランダ・エメロールトにある世界最大級の風洞を使ってテストした。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

8/10ニッカーズをはき、白いシャツに蝶ネクタイを締めたマネキンが搭乗。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

9/10グライダーは予想通りの動きを見せた。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

10/10「本当に飛行に適したグライダーだ」とプロジェクトを率いたアンドリース・ディルマンは言う。
PHOTOGRAPH COURTESY OF GERMAN AEROSPACE CENTER

Prev Next

動力飛行が可能であることを証明した、という栄誉を独占しているのは、米国のライト兄弟だ。だが彼らの前にも、2人が着想を得る源となった人々が存在していた。人類が地上から飛び立つために、必要な基盤を築いた人々だ。

そのひとりが、ドイツの発明家オットー・リリエンタールだ。1890年代に数機のグライダーを製作し、2,000回を超える飛行実験を自ら行った(ベルリン近くには、実験用の人工の丘もつくった。1893年には250mの飛行距離を達成している)。

1896年にグライダーの墜落事故で頸椎を損傷して死亡したが、詳細な鳥の研究に基づいた、曲線を描く翼を備えたリリエンタールのグライダーは、ライト兄弟の着想の源となった。

それから1世紀以上が経過しているが、ドイツの政府機関ドイツ航空宇宙センター(DLR)の研究者たちは、リリエンタールの実績について、持続飛行にどの程度まで近づいていたのか、死亡原因は何だったのかなどを突き止めたいと考えた。

そして「ライト兄弟が初めて製作した飛行機」を再構築した米国のプロジェクトに刺激された少人数のチームが、6カ月を費やしてリリエンタールのグライダーを構築し、実験飛行を行った。

研究チームはまず初めに、ドイツ北東部のアンクラムにあるオットー・リリエンタール博物館を訪ね、「Normalsegelapparat」(ドイツ語で「標準滑空機」の意味)の原図を入手。そして、6週間かけてヤナギの木で枠組みを構築した。

リリエンタールが枠にかけた分厚い綿の布地はかなり前に生産中止になっていたため、工場に依頼して、このプロジェクトのために特別に約60平方メートルの布をつくってもらった。

完成したグライダーの重量はわずか約18kgで、翼の端から端までの長さは約6m。操縦士は自分の腕で翼からぶら下がり、平行棒につかまった体操選手のように、自分の身体を振り子のように動かして操縦するようになっていた。

マネキン人形を乗せて完成したグライダーは、オランダのエメロールトにある巨大な風洞に送られ、そこで実験が行われた(以下の動画)。19世紀の雰囲気を出すために、マネキンはニッカーズをはき、白いシャツに蝶ネクタイを締めていた。

次に必要なのは、リリエンタールと身体の大きさがほぼ同じである研究生を見つけてグライダーに乗せることだった。見つかった若い男性は、身長が180cmを超え、体重は約88kg。彼がグライダーに乗って体重を移動させる間、チームはグライダーの重心や人間が乗っているときの動きを測定した。

グライダーは予想通りの動きを見せ、滑空比は4(1m下がるごとに4m進む)だった。

問題も見つかった。機首が上がりすぎると、たちまち制御が不可能になる。リリエンタールが上昇する突風に突入したあと墜落したという史料の記録があることから、この操縦の難しさが墜落の原因となった可能性が高いという。