「セグウェイ」というと“未来の乗り物”というイメージだ。2つのタイヤの間に足を乗せ、そこから手元まで伸びたT字のハンドルに手をかけて操作しているらしいのだが、実際どういう原理で動いているのか分からず、スーッとゆっくり移動していく様子は何度見ても不思議な印象を残す。

しかし、そのセグウェイの第1世代機がアメリカでリリースされたのは2001年のこと。実にもう15年前のことなのである。日本での正規販売が開始されたのは2006年のことだというが、それでももう10年前だ。それほど前なのに、相変わらず自分のセグウェイへの理解は、“なんだか未来っぽい不思議な乗り物”といったレベルに留まっている。

歩行者が行き交う道をセグウェイが走る


そこへ来て2016年4月から「セグウェイツアーin二子玉川」と題された、世田谷区二子玉川エリアをセグウェイで走行するツアーが試験的に開始されたという知らせを聞いた。走行エリアには、二子玉川駅周辺の“公道”も含まれているという。歩行者が行き交う普通の道をセグウェイが走る……。ぼんやりとしかイメージできないそんな場面を実際に目の当たりにしたいと思い、ツアーの様子を見せてもらうことにした。

集合場所はショッピングセンター「二子玉川ライズ」前の広場。ちなみに、この「セグウェイツアーin二子玉川」は「二子玉川地区交通環境浄化推進協議会」、「東京急行電鉄株式会社」、「セグウェイジャパン株式会社」の三者による取り組みで、現在は安全性を検証する試験運用段階である。一般の参加受付は夏以降になる見通しだ。というわけで、私もツアーに直接参加することはできず、関係者が試験的に参加するツアーに同行する、という形で取材させてもらった。

行き交う人々も興味津々


広場にセグウェイが運び込まれる。初めて目の当たりにするセグウェイは思ったより大きく、安定感のある感じだ。


「セグウェイツアーin二子玉川」の目的は、ただセグウェイに試乗することではなく、セグウェイを通じて「楽しい交通マナー」への理解を深めることにあるという。なんせ実際に町の中を走るわけだから、他の通行者の方や自転車、ベビーカーに注意を払いつつ、交通を妨げることなくセグウェイに乗る技術が必須となる。その上で、「町なかの移動のお手本」になることを目指すため、インストラクターであり、セグウェイジャパン株式会社の取締役でもある秋元大さんの指導のもと、正しい操作法から走行中の目線の配り方などがコーチされる。


セグウェイに乗ること自体は決して難しくないそう(「歩ける人は乗れる」らしい)だが、「セグウェイツアーin二子玉川」では複数台で一列になって走行していくため、チーム間でのコミュニケーションの取り方や、人の声に耳を傾ける力など、技術面だけでない総合的な講習内容となっていた。


参加者が一人残らずツアーに参加できる技術を身につけるまで時間を割くらしく、この日も50分近い時間をかけて丁寧に講習が行われた。ちなみに講習中は駅前を行き交う人々が数多く足を止め、「これ何やってるんですか!?」と興味津々の様子。やはりセグウェイが動いてる様子ってインパクトあるよなー。



いよいよ公道での試乗開始


いよいよツアー本編がスタート、この日は「二子玉川ライズショッピングセンター」周りの公道を進み、「二子玉川公園」を経て多摩川河川敷へと向かうコースだったが、ツアーで走行するコースについても現段階ではテスト中で、確定したものではないそうだ。

いよいよ公道へと出ていくセグウェイの群れ。私は一行を追いかけるだけだが、我が事のようにちょっと緊張する。


セグウェイ自体は時速20kmまで速度が出るそうなのだが、当ツアーでは最高時速6kmで進むことになっている。今回この二子玉川でのツアーが実現したのは、企業実証特例制度を活用する形で道路交通法・道路運送車両法の規制について政府から特例措置を受けたためで、これまでは公道でセグウェイを走行させることは認められていなかった。ちょっとややこしく感じる話だが、東急電鉄とセグウェイジャパンと、二子玉川地区交通環境浄化推進協議会を始めとした世田谷区の地域としての協力があって実現した規制緩和の例なのである。ただ、緩和されたといっても、速度についての厳密な取り決めがあり、時速6km以下で走行する必要があるというわけだ(今回の規制緩和ではセグウェイは「小型特殊自動車」という扱いになっており、一台ごとにナンバープレートがついている)。


時速6kmといっても一般的な歩行速度よりは速いので、私は撮影をしながら一行に小走りでついていくだけで息があがってきた。生まれて初めて「セグウェイ乗りたい!」と心の底から思った瞬間であった。

コース中には信号の切り替わる間隔の短い横断歩道などもあり、細心の注意を払って走行していく。道行く人の多くは、突然現れたセグウェイの群れに驚いた様子だが、ツアー参加者が「こんにちは!」と声をかけて手を振ると、皆一様に笑顔で手を振り返してくれるようだった。

「ロボットの通行にご留意ください」の看板も


「二子玉川公園」は「搭乗型移動支援ロボット実証実験区間」に指定されていて、「ロボットの通行にご留意ください」と書いた看板が立てられていた。


公園内に入るとますます人々のセグウェイへの視線が集まり、集まってくる子供や、ケータイで写真を撮るカップルなどがチラホラ。セグウェイ、かなりの人気者である。


公園から河川敷へ進み、昼下がりの風が心地よい空の下をゆっくり進むセグウェイの列を後ろからぼーっと見ながら、つくづくシュールな光景だなーと思ったが案外こんな未来も遠くないのかもしれない。


走行中、秋元さんがレシーバーを通してセグウェイについて解説をしてくれるのだが、それによれば、セグウェイはアメリカの警察や、観光地でのガイドツアーに最も使用されているという。その理由は、セグウェイに乗っていると自分の周囲への注意が自然に喚起されるという特性や、他の通行者と適度な距離感がとれることなどにあるとのこと。

ツアー終了後に私もセグウェイにほんの少し試乗させていただいたのだが、セグウェイはアクセルやブレーキがなく体重移動を利用して走行し、方向転換する際には進みたい方向に顔を向けて曲がっていくという風に操作するので、自然と視界が広くなる感覚があった。不思議なもので、普通に歩いているより様々な物事に注意が向く感じがするのだ。

「セグウェイツアーin二子玉川」の一般参加受付(有料)は今夏開始予定。私もセグウェイで公道を走る感覚を体験してみたくなった。ツアーの詳細については「セグウェイツアーin二子玉川」の公式サイトをチェックしてみて欲しい!
(スズキナオ)

イベント情報:「セグウェイツアーin二子玉川