イケメン大仏やドラえもんの銅像も!


街角や公園、学校など、全国各地で見かける銅像。実は、その多くは同じ街でつくられている。その街とは、富山県高岡市だ。

高岡市は銅像づくりが盛んで、全国の銅器生産の9割を占める。全国各地の大仏から、小学校の二宮金次郎、さらに最近増えているアニメのキャラクター銅像まで、ジャンルも様々。東京・世田谷の桜新町駅前にあるサザエさん銅像や、鳥取・境港にある水木しげるロードの妖怪ブロンズ像なども、そのほとんどが“メイド・イン・高岡”なのだ。

実際に高岡市を訪ねてみると、街のそこかしこで銅像に出会える。たとえば、高岡駅のすぐ近くにある「ドラえもんの散歩道」には、ドラえもんの人気キャラクターたちが勢ぞろいしている。



奈良・鎌倉と並ぶ日本三大仏のひとつである「高岡大仏」も見ごたえたっぷり。与謝野晶子が「美男」と称したことで有名で、日本一のイケメン大仏との呼び声も高いのだとか。



銅像も現代アートとコラボ




「昔は偉人やお殿様などの銅像が多かったのですが、1970年代ごろからパブリックアートの依頼が増えてきました」

そう話すのは高岡を代表する鋳造メーカーのひとつ、平和合金の藤田さん。かつての主流であった仏像などの依頼は減りつつあるものの、そのぶん、キャラクター銅像など新たな分野に市場を開拓しているそう。

さらに最近では、現代アートの分野とも融合。この4月には田名網敬一ら6人のクリエイターとコラボした展覧会、その名も『ALLOY & PEACE』(合金と平和)を東京・表参道のスパイラルガーデンで開催した。

デザインセンスが光る商品も続々


銅像のような大物だけでなく、小物にも変化が。「仏像や仏具だけでは、業界は先細りしていく」との危機感を抱き、10年以上前から先進的な取り組みをしているのが、1916年創業の鋳物メーカー「能作」。小物を得意とする同社では日常的に使えるインテリアやテーブルウェアを多く手がけ、デザイナーとも積極的にコラボをしている。



また、銅器に独自の技術で色をつける銅器着色メーカーの「モメンタムファクトリー・Orii」では、美しい色合いを活かした時計やトレーなどのオリジナルアイテムを展開。ニューヨークなど海外の展示会にも出展している。



こうしたモダンな商品は値段が手ごろなものも多く、お土産にもぴったり。市内には鋳物体験ができるスポットもあり、伝統工芸をより身近に体感することもできる。



「日本遺産」に認定されたまち


高岡市は2015年4月に、文化庁によって「日本遺産」にも選ばれている。日本遺産とは、特色ある伝統や文化を持つ地域のストーリーを認定するもので、現在37件ある。高岡市は城下町を源流としながら町民が主体となって「ものづくりのまち」として発展を遂げた稀有な歴史性が評価されたのだ。

少しだけ歴史の話になるが、今から400年前、加賀前田家二代当主の前田利長によって、この地に高岡城が築かれた。ところが、わずか5年後に利長が死去し、その1年後、一国一城令により高岡城は廃城となった。これを境に、武士ではなく町民主役の街へと変わり、商工業で発展することに。その中で鍋や釜など生活用品をつくるための鋳物づくりが興ってきたそうだ。



北陸新幹線を使えば、首都圏からもすぐ。最寄り駅の新高岡駅は金沢駅の隣駅だ。古くて新しい高岡のまちは、ふらりとお散歩も楽しいですよ。
(古屋江美子)