全国で相次ぐ強制撤去…都内の”巨大ゴミ屋敷”を直撃してみた
ここのところ、ゴミ屋敷に対して行政の代執行が相次いで行われている。3月26日には、福島県郡山市で70代の男性が管理する民家4軒を市職員ら70人が、4時間かけて撤去した。撤去したゴミの総量は、24.3トン。作業費用は200万〜300万円で、管理する男性に請求される予定だ。周りに住む人に多大な迷惑をかける巨大ゴミ屋敷が東京にもあると聞いて、現場に足を運んだ。
■隣のマンションの出入り口まで山積みになったゴミ最寄りの駅は、御茶ノ水駅。オフィスと、住宅街が並ぶ閑静な街だ。ゴミ屋敷のある場所の周りも、住みやすそうな環境である。
現場に着くと、まず駐車場に積まれた、大量のゴミが目に入った。ぐちゃっと適当に積み重ねられた感じ。ゴミのすえた臭いが、ツンと鼻をついた。ゴミは隣のマンションの出入り口の前に、山積みになっている。アパートの住人は家を出るたびにゴミの山を見ることになる。これはたまらない。
ゴミ屋敷のせいで、まわりの地価が下がっているとの噂も聞いた。確かに、いくら御茶ノ水だからと言っても、住みたくない。ゴミの下を見ると、自動車が埋まっていた。古い車で走りそうにはない。車の中には生活した跡があった。どういうことだろう、と考えていると、
「なんだあ、ごらああ!! お前ら〜!!」
クレイジーなトーンで怒鳴られた。見ると、ホームレス風の男性が、怒気に満ち満ちた表情でこちらに向かって歩いてくる。持っていた荷物を振り上げ、こちらを牽制している。
「話聞きたかったら、100万円持ってこい!! ふざけるな!!」
と叫んだ後、ゴミ山の中に入っていった。
後に近所の人に聞いたが、ゴミ屋敷のオーナーがホームレスを自動車の中に住まわせているのだという。車の中で寝起きし、車の周りで煮炊きしている。屋外で、しかも大量のゴミの横で、カセットコンロを使って食事を作るのはすごく危ない。乾燥した季節ならば、いつ火が燃え移って、火事になってもおかしくない。
ホームレスが自宅の前に住み着いているだけでもかなり気分はよくないが、火を使っているとなると、おちおち寝ていられないだろう。自動車の周りにはネズミ捕りが設置してあった。ホームレス自身、ネズミが何匹も車の中で繁殖して困っているとボヤいているという。もう最悪である。
そしてゴミ屋敷だが、家の前はゴミで一杯。ゴミの圧力でドアが膨れ上がっている。驚いたことにこれでも、以前に比べたら少しは綺麗になったのだという。区役所に少し片付けるよう指導を受けたということだ。
オーナーは、かなりの資産家の子息なのだという。一帯に、オーナーの一族の土地があるそうだ。ここは、元々借家で長い間、他人に貸していた物件だったが、ここ数年、大家が住んでいる。そしてもっと驚いたことに、この建物は、現在もアパートで、住人が住んでいると聞いた。こんな家にお金をはらって住むとは、ちょっと信じられない。一日いただけで、頭がおかしくなってしまいそうだ。
大家いわく、ゴミをためている訳ではなく、置いてあるもの全てが商品なのだという。だから業者による片付けは考えていないそうだ。片付けるなら、自分でゆっくりと気が向いた時にやると言っている。
つまり、このままの状態が今後何年も続くのだ。こんな状況を、周りの人は文句を言わないのだろうか? もちろん言っている。警察も何度も呼んでいる。ただ家主は、屁の河童だ。
「ここは全部、俺の土地だ。俺が俺の土地で何をしても文句を言われる筋合いはない。むしろ俺に文句を言っているヤツの家は、公道に花壇を作っている。むしろソッチの方が、法律違反だ。逆に訴えてやる」
と息巻いているという。たしかに自分の所有する土地の中でなら、原則的には何をしても構わない。ただ、それにも常識的なレベルというのがあるだろう。
行政代執行という行為自体、手放しで賛成できることではない。しかし、実際に現場を見て、日常的に被害をこうむっている近隣住民の気持ちを考えると、強制的な撤去もいたしかたない、という気持ちになった。
文・村田らむ(むらたらむ)※ライター・イラストレーター・漫画家。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマにした体験、潜入取材を得意とする。著書は『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)など多数。近著に『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)がある。