つぶやきは災いのもと?

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 コンビニや牛丼店などの従業員がTwitterに不適切な画像をアップしてしまう「バカッター」が数年前から話題になっている。勤務先のブランドイメージを貶めることから「バイトテロ」とも呼ばれているが、その一方で有名人のプライベート情報を漏らしてしまうケースが相次いで問題になっている。

■高橋大輔を襲った「悲劇」

 2月、Twitterのあるユーザーが「まってうちのホテルにフィギアスケートの高橋大輔来たんだけど!?!?しかも男同志でダブルベッドのスイートルームだったんだけど!?!?!ほ、、、、」と書き込んだことが物議を醸した。このユーザーは「腐女子」を自称しており、最後の「ほ、、、、」は「ホモ」と言いたかったのか興奮気味だった。

 フィギュアスケート元世界王者の高橋大輔(29)といえば、2015年6月にニューヨークのゲイパレードに行った写真をアップしたことをきっかけに一部メディアで同性愛疑惑が取りざたされた。また、過去に浅田真央(25)との交際をウワサされた際、浅田の母親が「女友達のようなもの」と週刊誌の取材に答えたこともある。

 そういった経緯があったゆえ、書き込みが事実かどうかは不明でありながら一気に拡散されてしまった。

 しかし、ネット上では同性愛疑惑への興味以上に個人のプライベート情報を書き込んだユーザーに対する批判が爆発。「またバカッターか」「こんな従業員のいるホテルに泊まりたくない」「即刻解雇しろ」などと怒りの声が数多く上がった。問題のユーザーは程なく「ごめんなさい」と謝罪してアカウントを削除したが、その後も掲示板やまとめサイトによって書き込みが広まり続けている。

■引っ越し・銀行・ホテル…止まらない「バカッター」被害

 芸能人の「バカッター」被害はこれだけでなない。今年1月には、堀北真希(27)・山本耕史(39)夫妻を接客したという不動産会社の従業員が「今日仕事で堀北真希と山本耕史夫婦接客した。いきなりの出来事に手の震え止まらなかったw そしてついツイートしちゃった!!!!」「35万の物件紹介したw 賃貸で探してるくさいw」などとツイート。

 悪意があったわけではないようだが、住所や電話番号などの個人情報も扱っている業種だけに「ツイートしちゃった」で済まされることではない。これに山本は「許すわけにはいかない」と怒りをあらわにした。

 2015年6月には、りそな銀行の中目黒支店で働く母親から芸能人の情報を入手していたという女性ユーザーの発言が大きな問題に。「関ジャニ∞大倉忠義さん、ご来店理由※カードの損失 中目黒店 ざわつきwwwww」「この前母は西島秀俊さんの免許証顔写真のコピーとってきた笑」などと書き込んでいたために、同銀行が謝罪する事態となった。

 引っ越しでも油断はできず、2014年にゴールデンボンバーの鬼龍院翔(31)が「依頼した業者さんが今日引越しってツイートしちゃったみたい、恐ろしい時代だ…すぐに連絡して引越し取り止めにしました」と報告。ある男性ユーザーが「今から金爆のボーカルの引っ越し」とツイートしており、この人物は過去にも芸能人の引っ越し情報を流したことがある“常習犯”だった。

 また、KAT-TUNの田口淳之介(30)は「てか今日KAT-TUNの田口の引越した普通に彼女ですとか紹介しちゃうんだね」「一人暮らしでロング分も荷物あっておろし彼女の家だった 祝儀一人5000!」(原文ママ)などと引っ越し業者の男性に書き込まれ、交際がウワサされていた小嶺麗奈(35)との“同棲疑惑”が噴出。しかも「(荷物から)AVメッチャでてきた」とも暴露されるという悲惨な仕打ちを受けた。

 さらに強烈だったのは嵐の櫻井翔(34)。滞在先だった北海道のホテルの女性従業員が「やばいやばいwwwうちのホテルに櫻井翔くん泊まったんだがwwwこれから泊まった部屋行ってくるwww」「使用済みのせっけんとか歯ブラシあったけど流石に捨てたwww枕に髪の毛とかついてたよ←ベッドには寝ときました」などとツイート。使用後と思われる部屋の写真まで公開してしまった。

■つける薬なし?…被害が減らない理由

 なぜこのような有名人の「バカッター」被害が増加しているのだろうか。

「基本的にTwitterの書き込みは誰でも見られますが、仲間内だけの空間だと認識している人が少なからず存在する。特に若者世代にその傾向が顕著にみられ、親しい仲間に向けて『自慢したい』『ウケを狙いたい』という気持ちから書き込んでしまうようです。そういった人物がアルバイトで働いている場合、責任感の希薄さから情報流出が起きやすい」(IT系ライター)

 法的に厳しく対処すれば被害は減りそうにも思えるが、そうもいかない理由があるという。

「刑法上なら名誉棄損罪に問える可能性があり、民法上ならプライバシー侵害などを理由に損害賠償を請求することもできる。しかし、引っ越しや来店の情報くらいなら影響は軽微と裁判で判断されてしまうでしょう。『みなし公人』と判断される可能性もあります。よって被害者側には、裁判沙汰にするだけのメリットがなく泣き寝入りしがちになる」(前同)

 有名人にとって頭の痛い問題だが、芸能人の「バカッター」被害は大きな話題になりやすいゆえに企業にとっても脅威。だが「バカッター」につける薬は今のところなく、根本的な解決は難しそうだ。

(取材・文/佐藤勇馬)

佐藤勇馬(さとうゆうま)

個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、ネットや携帯電話の問題を中心に芸能、事件、サブカル、マンガ、プロレス、カルト宗教など幅広い分野で記事を執筆中。著書に「ケータイ廃人」(データハウス)「新潟あるある」(TOブックス)など多数