北朝鮮の行動で東アジアは緊迫化

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 北朝鮮がまたしても強行にミサイルを発射した。日米韓はこれを強く非難しているが、なぜ北朝鮮は世界各国から批判を浴びながらも強硬な姿勢を貫くのだろうか。今回の発射に関する専門家の意見は、国民的祝日とされる金正恩(キム・ジョンイル)総書記の誕生日である「光明星節」にあわせて、その祝賀ムードの高揚と、世界とりわけ米国に対する威嚇行為を狙っているとも伝えられるが、本当にそんな理由が強硬な姿勢を生み出しているのだろうか。

■世界上位の武器輸出大国という背景

 実は、およそ10年前まで北朝鮮は世界各地に武器を輸出する武器輸出大国の一つに数えられていた。アメリカ議会調査局(CRS)によると、毎年10億ドル規模の輸出をしていたと言われており、当時の状況でみると、世界的にも11位とかなりの高位置にランクインしていた。

 その後、各国による経済制裁などもあって、かなりのランクダウンを余儀なくされたが、ある意味、北朝鮮にとって、武器の開発は外貨稼ぎの絶好の手段であり、それなりのビジネス・ポテンシャルを有していたことが分かる。

 しかも、その取引先の多くのはイラン・イラク・シリアといった中東諸国とされ、北朝鮮製の武器は、中国製に比べて安価で安定して供給されるため、中東地域のテロリストにも歓迎されているのだという。そう考えれば、今日のイスラム国を中心とするシリア問題やサウジアラビアとイランの軋轢などは、北朝鮮からしてみればビジネス・チャンス以外の何者でもないだろう。

 実際、以前にある海外ジャーナリストと食事をした時に、こんな話を聞いたことがある。

 アメリカが国連に反発してでも執拗に戦争行為を繰り返すのも、きちんとした目的があるからだという。それが武器・弾薬の在庫整理と新兵器の品評というもの。無論、その真偽は定かではないが、ビジネスという視点に置き換えてみると、決してあり得ない話というわけでもないだろう。そう考えると、北朝鮮がこうして強硬に武器開発に精を出すのも何となく頷ける。しかも、世界各国がリアルタイムでその成功の可否を実況してくれるのだ。まさにこれ以上の品評会はないだろう。

 そう考えたとき、今回の日本政府の対応はどうだったか。沖縄上空をミサイルが通過するのを知りながら、迎撃はせず、そのまま看過した。もちろん、政治的な配慮や技術的な問題を含めた総合的判断をもとに対応をしているのだろう。しかし、彼の目的があくまで武器輸出における商談的な意味であったとしたら、今回の対応はこの上ない宣伝効果にはなってしまうのかもしれない。

 以前、知人を介してイスラエル人のこんな話を聞いたことがある。これがイスラエルであれば、対応はまず撃たせる前に基地を破壊することになるだろう。なぜなら先制攻撃こそが防衛の基本とイスラエルでは考えるからだ。

 さすがにこの対応は日本では出来ない、とは思うが、少なくとも北朝鮮は先月にも核実験を行ったばかりである。この執拗な動きには、表面的な動き以上に警戒して臨む必要があるのかもしれない。

著者プロフィール


一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

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