公的年金の積立金の管理運用業務を行う年金積立金管理運用独立行政法人(川瀬隆弘理事長)は27日、信託財産の管理・運用を委託していた信託銀行3行がライブドア(LD)を相手取り損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。請求額は約48億9000万円で、有価証券報告書虚偽記載による上場廃止で、保有していたLD株の価値が下がり損失が生じたとしている。

 訴えを起こしたのは、同法人の信託財産の管理・運用を受託していた三井アセット信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、資産管理サービス信託銀行。保有していたLD株について、一連のLD事件で約43億7000万円の売却損が発生したため、弁護士費用を含め約48億9000万円をLDに求めている。今後、事態の推移によっては、元役員らを提訴する可能性もあるという。同法人は原告に名を連ねなかったが、提訴の実質的判断は行ったという。訴訟代理人は森・濱田松本法律事務所が務める。

 同法人によると、東京地検特捜部のLD強制捜査が行われた今年1月16日時点で、LD株を約1427万株保有。取得簿価は約63億5000万円だったが、1月26日までに全株式を売却、約43億7000万円の売却損が発生した。個別の投資判断は各証券会社が行っていたものの、大枠は同法人が決めていた。

 同法人は記者会見で、「LDには当局が認定する重大なルール違反があった。LDへの投資によって損失が発生したことは残念に思っているが、本来、有価証券報告書に正確な情報を記載しなかった責任はLDにあるのではないか」との見解を示した。LD株の運用益については触れなかったが、1月16日のLDの株価は696円で、単純計算するとその時点で約99億3000万円分のLD株を保有していたことになる。

 同法人は旧年金資金運用基金から、公的年金の積立金の管理運用業務を引き継ぎ、今年4月に発足した厚生労働省所管の独立行政法人。厚生年金と国民年金の給付の財源となる年金積立金約106兆円(9月末現在)の管理・運用を行っている。旧年金資金運用基金は2005年、西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止になった際にも、委託する信託銀行が損害賠償請求を提訴している(現在係争中)。

 今回の提訴について、LD広報は「訴状が届いていないので、コメントは差し控えたい」と話している。【了】

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