初日のセッションでWHOの新型インフルエンザの発生シナリオを報告するWHO事務局顧問の押谷仁・東北大教授(撮影:宗宮隆浩)

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早期発見の重要性と難しさ。13日に閉幕した「新型インフルエンザ早期対応に関する東京会議」では、封じ込め成功のカギを握る初動態勢の強化が議論された。世界保健機関(WHO)の予測では、新型インフルエンザによる世界の死者は約700万人。世界的な大流行を防ぐためには、共同提言にもあるように、感染情報の共有や態勢整備への支援など、国際的な協力体制が不可欠だ。早期封じ込め対策に焦点を絞って開かれた初の国際会議で明らかになった課題を探った。

 「発症から2─3週間まででないと封じ込め成功は難しい」。WHOの尾身茂・西太平洋事務局長は、発症から対策発動までの目標日数を示した。初日のセッションでも、WHO事務局顧問の押谷仁・東北大教授が、アジアの5カ国の鳥インフルエンザ(H5N1型)の人への感染例約70例で、WHOへの報告までに要した平均日数が16.7日だったと公表。人の移動制限など対策発動までの時間を考慮すると「遅すぎる」とした。

 尾身事務局長によると、報告が遅れる要因は2つある。感染例が多く報告されている発展途上国の農村部では、感染を見抜く保健衛生関係の人材が不足しており、また検査・監視体制が不十分なところが多い点だ。尾身事務局長も12日の会見で、「農村部の調査の質的向上が最大の課題」と述べた。もう1つは、人が鳥と一体で生活しており、鳥との接触が多い点で、農村の養鶏方法の改善が必要との認識を示した。

 会議では、抗ワクチン剤のタミフルの分配方法なども話し合われた。だが、発生地域の住民に、個別に配るのか、一カ所に集まってもらって渡すのかなど、具体的な結論は持ち越しとなった。また、今回の会議は、医療関係者中心で議論を行ったが、今後、農林関係者、法律関係者も巻き込んだ議論も必要だ。

 提言では、検査体制の強化などが盛られた。尾身事務局長は「これは、みんなが勝つか、みんなが負けるかの戦いだ」と力を込め、日本、米国などの先進国の資金面などの協力に期待感を示した。
               
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◇新型インフルエンザ 鳥インフルエンザが鳥から人に感染し、それが人から人に感染するウイルスに変異したもの。政府の行動計画では、新型インフルエンザが発生した場合、国内では1300万─2500万人の患者が発生し、死者は17万─64万人と予測している。【了】

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