Jリーグもシーズンの大詰めを迎え、各チームの順位が確定し始めています。J1リーグでは優勝争いが今年も最終節にもつれ込む熾烈な展開で、最後の最後まで盛り上がりがつづきそうです。

そんな中、もうひとつ盛り上がりを迎えるのが降格争い。J1リーグでは徳島ヴォルティス、セレッソ大阪のJ2降格が最終節を待たずに決まりました。

例年のことではありますが、降格したチームの関係者・サポーターは深い悲嘆に暮れます。スタジアムで号泣する、あるいは怒号を飛ばすようなことも珍しくはありません。それはまるでこの世の終わりか何かのようでさえあり、うかつに触ればコチラまで火傷しそうなほど。

はたして、降格はそこまで悲嘆すべきものでしょうか。

降格は単に戦いの舞台となるリーグが変わるだけのこと。サッカーをすることが禁止されるわけでも、ホームタウンを変更させられるわけでもありません。J2だからと言って、つつましい運営を要求されるわけでもなく、大量補強でJ1チームをも上回る最強チームを結成しても問題はないのです。日本代表クラスの有力選手がJ2降格後もプレーすることだって、実際にある話です。

J1からJ2へ降格したとしても、それはサッカーが弱かったというだけのこと。そのチームの価値は、サッカーの強さ・弱さだけで決まるものではありません。サッカーはエンターテインメント。サッカーチームが本当に売っているものは「楽しさ」です。サッカーを見て楽しい時間を過ごすという点において、J1とJ2で違いがあるとは思えません。毎週サッカーがある喜び。仲間と集い共に応援する喜び。J1でもJ2でも、喜びは変わらないはずです。

「強くても、弱くても、愛される地元のチーム」。

それこそがJリーグが掲げる地域密着の理念とも合致する姿のはず。

現実問題としてJ2に降格すると観客動員や営業収入が下がって困るのだという意見はあるでしょう。しかし、それはチームが「地域に愛されるエンターテインメント」になりきれていないから。地域に密着した自分たちの魅力ではなく、スポーツニュースでの露出とか、対戦相手の知名度とか、他力に依存しているからこその嘆きです。

また、サポーター自らが「降格」に怒るのは、自分たちのチームの価値を毀損する行為です。「J2に落ちると楽しくなくなる」「J2に落ちると価値がなくなる」「ウチのチームは見る価値ナシ！」と大声で叫んでいるようなものです。そんなときこそ「いや、J2でもこのチームの素晴らしさ、面白さは変わらない」と積極的に発信し、友人・知人を誘い合わせての観戦会などで、楽しさの啓蒙活動に励むべきでしょう。

勝っているときは面白いが、負けているときは面白くないなら、それは応援ではなく勝ち馬に乗っているだけ。

降格が決まったチーム関係者・サポーターには、むしろ降格をチャンスととらえてほしいもの。降格によって来季は「適切な強さの対戦相手」との試合が組まれるようになるのです。しかも、少なくとも1年以上対戦がない、フレッシュな顔ぶれ揃い。強い相手にやられっぱなしになるだけでなく、実力伯仲・互角のシーソーゲームが増えるでしょう。ドラマティックな展開の試合が増えて、逆に今季より楽しくなるかもしれません。

「来季は久々のJ2だ！」
「対戦カードが新鮮だ！」
「早くも来季が楽しみだ！」

それぐらいのワクワク感を出すほうが、適切ではないでしょうか。

降格とは、悲嘆に暮れるような出来事ではないはずです。

（文＝フモフモ編集長　http://blog.livedoor.jp/vitaminw/）