特殊相対性理論をかじってみませんか?〜浦島太郎は光速で移動した?〜

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アインシュタインが唱えた「相対性理論」。その名前は聞いたことはあっても、どんな理論なのかを具体的に知っている人は少ないのではないでしょうか。

実はこの相対性理論には、「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」の2つがあります。響きだけ聞くと、なんだか特殊相対性理論の方が難しそうな感じがしますが、特殊相対性理論はある特定の条件下でのみ成り立つ理論で、それを拡大してあらゆる条件下で成り立つようにしたものが一般相対性理論です。

そのため、特殊相対性理論の方がとっつきやすいと言われています。

そこで、秋の夜長を利用して、特殊相対性理論の中身を少しだけかじってみませんか?

■ 特殊相対性理論と光速度不変の原理

特殊相対性理論とは、ドイツ生まれの理論物理学者であるアルベルト・アインシュタインが1905年に発表した、時間や空間、電磁気学に関する理論です。

そして、その柱となっているのが「光速度不変の原理」です。光速度、つまり光の速度は誰が見ても常に一定だよというこの考え方は、私たちが学んできた物理では理解しがたい内容かもしれません。なぜなら、時速100kmで走る車Aの横を、自分の車が同じ時速80kmで同じ方向へ走っていると想像してみてください。

すると、車Aの相対速度は自分から見れば100−80=時速20kmであるように感じるはずです。

しかし、このような考え方は光に対しては通用しません。たとえば、光の速度をCkm/秒として、自分はその80%の速度となる(C×0.8)km/秒で飛んでいるロケットに乗っているとイメージしてください。そのロケットと同じ方向に光を照射すると、その光の相対速度はどれだけに感じるでしょうか。

普通に考えれば、相対速度はC−(C×0.8)=(C×0.2)km/秒となるような気がします。しかし、実際にはCkm/秒のままです。つまり、ロケットに乗っている自分から見ても、1秒後にはその光がCkm先まで進んでいることになります。

これこそが、誰が見ても光の速度は一定だという「光速度不変の原理」なのです。

私たちの常識からすると、とても信じがたいような内容ですが、このことは多くの科学者によってすでに実証されています。まさに光の不思議な世界ですね。

■ 光の速度が一定だとすると…

でも、ちょっと待ってください。このロケットと光の様子を外から見ている人からすると、光の速度はC+(C×0.8)=(C×1.8)となってしまうような気がしませんか?
…けれどもそんなことは起こりません。なぜなら光の速度は誰が見ても常にCのまま不変なのですから。

ということは、ロケットに乗っている人と、その様子を外から見ている人とでは、光の速度以外の何かが違っているはずです。いったい何が違うのでしょうか。

その1つが「時間」です。光はどんな状況であろうと1秒間にCkmしか進まないわけですから、誰から見ても光がCkm先の地点に到達したときが、その人にとっての1秒後ということになります。
このように、時間はその人の置かれた状況によって変化する、つまり絶対的なものではなく相対的なものであるということから、「相対性理論」と呼ばれているわけです。

■ 浦島太郎は光速で移動していた?

皆さんは「浦島太郎」というおとぎ話を知っていますか。
浦島太郎がいじめられている亀を助けたところ、お礼に竜宮城へ連れて行ってもらうというお話です。

あのお話の中で、浦島太郎は竜宮城で数日間過ごした後、地上に戻ってくるとなぜか何十年もの時が経ってしまっていたという結末を迎えますね。でも、相対性理論に基づくと、もしも浦島太郎が光速に近い速さで移動していたと仮定すれば、このお話と同じことが現実でも起こりうるわけです。

そのため、このような現象を「ウラシマ効果」と呼んでいます。ここまではっきりとした差は出ませんが、宇宙飛行士が何日間もすごいスピードで地球の周りを移動してから帰ってくると、これに近い現象が起こっています。

■ まとめ

今回は、特殊相対性理論の柱となっている「光速度不変の原理」という考え方をご紹介しました。
この内容は、一般的な感覚では理解しがたいことかもしれません。けれども、こういった考え方を採用することで、時間は絶対的なものではなく相対的なものであるという事実にたどり着くことができ、それがその後の科学の発展に大きく貢献しているのです。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。