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28日付けサンケイスポーツによると、ファイターズのファームの本拠地、鎌ヶ谷のファイターズスタジアムに日本球界初となる球場内プールが作られるという。 一塁側ファウルゾーンの外野席に設置され、縦12m、横5m、水深50cm。7月14日のイースタン・リーグ公式戦、ゴールデンイーグルス戦でお披露目の予定だそうだ。

いやはや、豪華すぎるスコアボードの次はスタンドにプール。これもダルビッシュ効果なのだろうか!?

(写真:7月14日のお披露目に向けて着工した、ファイターズスタジアムの一塁側ファウルゾーンのスタンド 2013年5月25日撮影)

いやはや驚いた。25日に観戦に行ったときに一塁側のファウルゾーンのスタンド(普段は開放しない外野席)の工事をしている形跡があったので今度は何を…と思ったらこの発表。スコアボードの大改造に続くファイターズスタジアムのモデルチェンジだ。

これもひとえに、2011年オフシーズンにポスティングシステムで移籍した“大エース”ダルビッシュ有の移籍金のお陰だろう。移籍成立前に沖縄県の名護市と北海道の旭川市に高額の寄付をし、その後札幌市とファームが春季キャンプで世話になる国頭村にも寄付をして話題になったが、とどめはファームの本拠地の整備にダルマネーをつぎ込むと言うことか。

これは一つにはファイターズの一軍本拠地の札幌ドームに手を加えることが出来ないらしいので、札幌市に寄付することで球団が間接的に恩恵を受けるかもしれないが、鎌ヶ谷に金を落としてくれるとは足を運ぶファンとしてありがたい話ではある。

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ファームの専属のマスコット、C☆Bを誕生させた2006年あたりから、かけ足で鎌ヶ谷は選手の育成施設というのみでなく、エンターテイメント性を高めていった。

その甲斐あってか、イースタン七球団で唯一つ、本拠地球場での入場者数が一試合平均で1,000人を超えるようになるなど、その成果は数字に表れてきた。
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球団内部で、鎌ヶ谷の試合運営や、東京ドームでの主催試合を運営する“首都圏事業グループ”が今年から“首都圏事業部”に昇格したと成田竜太郎事業部長自らが語っていた。

ただ、冒頭の写真を撮影した5月25日はファイターズにとっては“わくわくデー第一弾 ”と銘打ったイベントデー。おいしいラーメン店の出店や、外野席後方でのジンギスカンシートの設置などで集客を狙ったが、この日が1,252人で、翌日の日曜日が1,657人。実はこの数字は日曜日はともかく、土曜日はイベント企画を組んだ日にしては入場者数が少ない。当日、複数の常連さんが言っていたのが「これが適正値<笑>」。イベント目当てではなく、純粋に野球を見に来るファンの人数がだいたいこのくらいだとのことだ。確かに大谷翔平が出場するとか、昨年だったら斎藤佑樹が登板となると一気に入場者数が増えるという傾向があったが、特定の集客力のある選手に依存するのではなく、イベントで集客を目論んだ割には球団としては目論見が外れたのかもしれない。

ファイターズのファームは本拠地球場での試合での入場者数ではイースタン・リーグ7球団中1位で、7球団中唯一、一試合平均の入場者数が1,000人を超えている。毎年イースタン・リーグ開幕の時期に合わせて発行されるガイドブック「プロ野球イースタン・リーグ観戦ガイド2013によると、2008年以降昨年までファイターズのファイターズスタジアムでの一試合平均入場者数は五年連続で1,000人を超えている(この間、他球団ではジャイアンツが2008年から2010年の三年間1,000人を超えたのみ)。昨年は夏頃から急速にチーム成績が下降したが、それでも平均1,145人。過去最高の2009年の1,472人、2011年の1,403人よりは減っており、今季が心配された。今季も4月にイースタン・リーグタイ記録の14連敗を喫したもののここまで(5月26日現在)一試合平均はなんと前年増の1,280人だ。

チームが負け続けていても、いや、だからこそ球場に駆けつけるというファンが多いのか、ほとんど条件反射の様に球場に駆けつけている人が多いのか、本当に熱心なファンの存在に頭が下がる。今季は14連敗を止めた4月27日からのゴールデンウイーク前半の29日までの三連休のベイスターズ戦に順に2,987人、4,103人、4,354人とイベントを絡めて多くのファンを集めたのが効いて平均値では前年超えを今のところ果たしている。

今後は6月最後の土日、29、30日のマリーンズ戦で各日先着2,000人にオリジナルデザインのTシャツをプレゼント。また8月末までの期間限定で様々な有料アミューズメント施設も設営するという。

その次の週末、7月6日、7日には鎌ヶ谷では初のウエスタン・リーグとのファーム交流戦、タイガースを迎えての二連戦。タイガースファンの殺到を懸念したか、普段は全席自由のところを一塁側と三塁側に分けて通路より前方を指定席として既に前売り開始。何とタイガース側から先に前売り券が売れているという噂もある。

そして毎年恒例の、C☆Bの誕生日である「海の日」を含めた三連休(13、14日がゴールデンイーグルス戦、15日の海の日がジャイアンツ戦)に「鎌スタ☆祭」でイベントを仕掛け、プールのお披露目もこの時を予定している。

取りあえず次々と仕掛けている。

この前の土日の25、26日の少なさが、たまたまなのか、イベントそのものが飽きられているのか、ファイターズファンにラーメン好きが少ないのか…。
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常連さんの言うとおり適正値なのか、見方はいろいろあるだろう。球団は細かく分析することだろう。それに14連敗を脱出した後も、5月の成績は5勝13敗1引き分け。そして今現在5連敗中。ファームはいっこうに低迷から脱却する素振りがない。

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エンターテイメントの場としての充足感をファンに得てもらおうとしてのスコアボードの全面リニューアルや、今度のプール設置なのだろう。おそらくはプール目当てで入場者数は増えるだろう。それが収入増になるのだろうから、球団経営としては必要な投資なのだろうが、本当にそれが野球場としての魅力としてあるべき姿なのだろうかという疑問がある。

最近の土日の鎌ヶ谷の試合で、試合中にトイレや売店を利用しようとコンコースに降りると、試合を観ないでくつろいでいる人の多さに驚く。初回から最終回まで変わらぬテンションで応援を続ける人達がいる一方であまりにコントラストがはっきりしている。売店の前にテーブルがあるから、席に戻らなくても食事が出来るのだが、試合中なのだから、商品を手にしたら席に早く戻りたいと思うのが普通だと敗戦処理。は思うが、そうでないのが普通だというファンが意外に多いのだ。

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もちろん昨年までも夏場には簡易プールが設置されていたりしてちびっ子が遊んでいるなど、親子連れならずっと試合を観ているわけではないケースもあろう。でもそうでないかなりの数が試合を観ずに楽しんでいる。

かつて、アンチ讀賣と称する人達から「東京ドームは野球を観てない人が一番多い球場」と揶揄されたが、そう揶揄していた人達が今の鎌ヶ谷を観たら同じ事を感じるのではないか。

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ファイターズのファームは、入場者数を増やすことも大切だが、顧客満足度という視点で物事を考えているのだろうか?分析した結果がスコアボードの大胆なバージョンアップとプールの常設だと言われれば返す言葉がないが、今日は何人入場した、今日の売り上げはいくらだった。という数字を追いかけるだけでなく、ファンを如何に満足させて帰らせて、また来ようという気にさせているか、それをリサーチしているのだろうか?
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常連さんであればあるほど、勝敗という点では期待に背かれる度合いが高いわけだから、試合を観ていない時間帯が長くなってしまうのかもしれない。その方が売店の売り上げが上がるのかもしれないが、それが本当にファームの興行として良いことなのか…。

敗戦処理。のように、自分の都合の付いたときにのみ球場に足を運び、試合を観て一喜一憂し、終わったら顔なじみの常連さん達と野球談義をしながら隙あらば選手からサインをもらって帰るという、選手と試合以外に興味を示さないファンは少数派だろうと自覚しているから、自分に合わせてああしろこうしろと言うつもりはない。だが、“いつまでもあると思うな親と金”ではないが、“いつまでもあると思うなファンと金”だ。(チームの勝敗や選手の活躍はもちろんだがそれとは別次元で)ファンを満足させよう、球場に足を向けさせよう、初めて来た人に「また来よう」と思わせるには何が必要なのか…。新たな局面を迎えているように思え、スコアボードやプールが本当にその答えなのか、ちょっとわからないので思いのままに書いてみた。

最後に、さすがにいまだに信じている人はいないと思うが、ダルマネーの使い途で鎌ヶ谷のファンの多くが真っ先に浮かんだという、スタンドに雨や陽射しを避ける屋根を設置するという件は先送りにされているのではなく、球場の構造上作れないそうなのだ。今季終了後に工事が始まるという話はないそうだ。

※ 本エントリー中のファイターズのファームの入場者数に関しては、2012年までの数字に関しては「プロ野球イースタン・リーグ観戦ガイド2013」(イースタン・リーグ刊)を、今年の入場者数に関しては北海道日本ハムファイターズ携帯公式サイトに基づきました。