「ほっとしています。まあ、これまでサポーターの皆さんは勝利を期待してくれていたのに、プレゼントすることが出来ずに、自分自身も情けない気持ちが多かったですけど、今日はいい試合ができて、しっかり勝利をプレゼントができて良かった。調子のいいチームだったので、簡単な試合ではないと思っていたので、しっかりと守って、勝利できたのはよかった」

 試合後、すがすがしい表情でミックスゾーンに現れた長友だったが、ストレスを感じる試合だったのではないだろうか?
 というのも、自陣深くでボールを奪い、ドリブルで前へ走り、 FW陣へパスを出しても、リターンパスが来ないというシーンが何度もあったからだ。パスを出したあと、ボールを要求しているにも関わらず、逆サイドや中央へとパスが出される。それで良い攻撃ができればいいのだが、ボールを失うシーンも多かった。

 ロスタイムのゴールキックシーンでも、長友が手を挙げてアピールしていたが、ゴールキーパーは右へスロー。そのボールが相手に渡り、長友が茫然と立ち尽くすシーンは印象的だった。

 しかし、これは左サイドに限らない。攻撃時、両翼が大きく開くのだが、サイドを使う場面が少ないのだ。長友がドリブルで打開できる左からの攻撃のほうが回数は多かったが、深い位置でサイドを使うところまでは出来ていないように思えた。そのことについて訊くと、少し厳しい表情で長友が答えた。
「3バックはまだこれからですね。1試合勝ったからと言って、浸透しているとは思わないし、僕らは始めたばかりなので、連係もまだまだなので。もっとサイド攻撃ができてくればいいのかなと。完全なサイドは僕とサネッティしかいないので、そこでもっともっと中の選手が絡むことができれば、厚い攻撃ができるのかなと。もちろん、(僕は)常に(チームメイトに)要求しているし、それは試合の中で意思疎通ができているから」

 ヨーロッパリーグのアウエイ戦をはさみ、次節はACミランとのミラノダービーが待っている。
「簡単な試合はないし、去年ミラノダービーをやったときは、僕らのほうが調子が悪くて、ミラノは調子のいい状況だったけど、僕らが2試合とも勝った。だから、調子がいいとか悪いとかっていうことは関係なく、ダービーは違う雰囲気と緊張感があるから、慎重に戦わないと難しい試合になる」

 ゲーム中、チームメイトとのコミュニケーションの中には、激しい口調で言い合っているように見えるシーンもあった長友。自己主張をしている姿は本当に頼もしさが感じられる。そして、試合終了の笛が鳴れば、言い合った仲間ともお互いの健闘をたたえ合う。昨季の低迷期を乗り越え、重ねた日々があるからこそ、よりインテルのユニフォームが似合うようになった。

「連勝を続けている今よりも、負けたときに何ができるかが重要だ」という話は、多くの選手が口にすることだ。チーム同様に選手個人も、いい時ではなく、悪いときにその選手の真価が問われるのだろう。
 だからこそ、連敗で躓いているニュルンベルクの清武や、体調不良で先発の座を奪われた内田、ベンチメンバーからも外れる日々が続く長谷部など、苦闘しているはずの彼らの姿からも目が離せない。