タンパベイ・レイズが松井秀喜とマイナー契約を結ぶ見通しだという。

 人工芝球場を本拠地とするチームとは……と思ったが、今の松井は選り好みができる立場ではないだろうし、そこは問題ではない。松井にとって肝心なのはDHの状況だ。そもそも、4月20日にBJ・アップトンが故障者リストから戻ってきており、レイズの外野に空きはない。

 レイズは開幕から16試合で、ルーク・スコット、ジェフ・ケッピンジャー、スティーブン・ボートの3人をDHとして起用している。DH全体の成績は、打率.197、出塁率.221、OPS.615と芳しくなく、なかでも新人のボートは、メジャー初安打すら打てず、4月20日に3A降格となった。

 残る2人のうち、ケッピンジャーは右打者で、DHよりも二塁手として出場することが多い。左打者でDH専任、松井と役割が重なるのはスコットだけだ。

 DH全体の成績が良くなく、3人のうちライバルは1人と聞くと、状況は楽観的に思える。だが、松井がスコットに取って代わることができるかというと、それは難しいだろう。

 昨シーズンは故障に泣かされたスコットだが、2008〜10年にはシーズン平均25本塁打、OPS.845を記録している。今シーズンもすでに、3本塁打、14打点。本塁打はチームでマット・ジョイスに次いで多く、打点はエバン・ロンゴリアと並んでチーム最多だ。また、スコットは33歳で松井よりも若い。

 それではなぜ、レイズは松井と契約するのか。

 答は、スコットが故障した場合の「保険」だ。同じ左打者でも、ボートを再昇格させるよりは計算できる。おまけに、マイナー契約なら金銭的なリスクもほとんどない。

 それでも、松井はこの契約を受け入れるべきだ。マイナーであっても結果を残せば、どこか他のチームから声がかかる可能性はある。故障者の穴埋めであったり、不振のテコ入れであったり。

 少なくとも、ユニフォームを着ないまま「過去の実績」を売り込むよりも、その可能性は高いはずだ。