カナビスカップの会場はアムステルダム郊外にある。

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「外国人に対して大麻の売買を規制したとしても闇にもぐるだけ。買える人はいるわけだから、誰かを仲介に売買されるだけだろうね」

アムステルダムのホテルで、フロント係の男性は冷ややかに言った。大麻等のソフトドラッグ規制が他国に比べて比較的緩やかなオランダ。近年ではその規制は強化されている。変わりつつあるオランダの大麻事情を追った。

オランダ南部の町、ローゼンダールとベルヘン・オプ・ゾーム。2009年に両市はコーヒーショップと呼ばれる大麻を販売・喫煙できる店の閉鎖を決めた。大麻購入に訪れる外国人観光客に向けての措置だ。また同国主要都市の一つ、南部マーストリヒトでも2011年10月から業界団体がドイツとベルギーを除く外国からの観光客に対し購入禁止を導入した。オランダ内での規制は、確実に進みつつある。

毎年11月にアムステルダムでおこなわれている大麻の見本市、カナビスカップにも変化が起きた。5日目の最終日に警察が立ち入り、イベントが一時中断したのだ。カナビスカップを主催する米国雑誌ハイ・タイムズによれば、逮捕者は出なかったようだが、このような事態でイベントが中断したのは今回で24回を数える歴史上、初めてだという。

アムステルダム市内のコーヒーショップにも影響は現れている。2011年度カナビスカップの優勝銘柄、リバティヘイズを販売するバーニーズ。そのバーニーズとライバル関係にあるグリーンハウス。両店内は賑わいを見せていたが、少しずつ変化も起きている。

「(もちろん原則として年齢確認は必要だが)以前に比べて各コーヒーショップ側は身分証の提示を求めることが多くなった。またTHC(向精神作用がある物質)を15%以上含む大麻は販売されなくなったので、以前のような強いものは手に入りづらくなったね」(30代オランダ人男性)

観光で生計を立てているホテル業者は、この潮流をどのように考えているのだろうか。

「全てのホテルが、ゴッホ美術館やチューリップ目当ての観光客で商売をしているわけでありません。この状況でアムステルダムでも規制が始まったら、潰れるホテルも多いでしょうね」(アムステルダム在住ホテルオーナー)

これら一連の規制強化は、国境で頻発している密輸を防ぐためのものだが、ドラッグツーリズムが一つの観光資源となってしまっている現状では、変革はなかなか容易ではない。薬物政策に限らず同性婚や安楽死、売春問題等で常に革新的な政策を取るオランダだけに、どのように舵を取っていくのか。今後の行方が注目される。
(欧州プレス)