今年、ヨーロッパ球界における2大イベントとして控えているのが、9月に行われるヨーロッパ選手権(オランダ)と、その後に控えるWBC予選(開催地未定)。ヨーロッパ勢の参戦国の数が、2から8(イスラエルを含む)に急増したWBC。今年のヨーロッパ選手権は、いわばその前哨戦にもあたる大会となっており、この両大会に参戦する国々がどのような戦い方を見せるのかは、非常に注目すべきところです。

 そこで今回から、WBCシード国であるオランダとイタリアを除く、ヨーロッパから出場する6か国について、この両大会をどのように戦うべきかを、投手力・攻撃力・守備力という3つのポイントの分析も交えながら、毎回1か国を取り上げて考えてみたいと思います。既に、各国の特徴については何度か触れていますが、ここではそのおさらいも兼ねて、各国の注目すべき点を取り上げることとします。少々気は早いですが、これを読んでおけば、ヨーロッパの代表選の観戦がさらに面白くなる、かも?

(1)ドイツ
IBAF世界ランキング:17位(欧州3位)
過去5年間の国際大会における成績

・2007年:W杯グループリーグ敗退、ヨーロッパ選手権4位
・2008年:北京五輪世界最終予選敗退
・2009年:W杯グループリーグ敗退
・2010年:ヨーロッパ選手権3位
・2011年:W杯グループリーグ敗退

 ホスト国となった前回のヨーロッパ選手権で、銅メダルを獲得したドイツ。ライバルのスペインが、同大会でシード権を逃したことから、ヨーロッパ3番手としての地位を固めつつある。最大の武器は打撃力で、ツボにはまった時の一発長打は、強豪国にも決して引けを取らない。バイエルン州レーゲンスブルグで開催した、2009年のW杯予選ラウンドが多くの観客動員を記録したことから、WBC予選も同地でホストするとの現地報道があり、関係者もかなり乗り気。移民や帰化人、ドイツ系アメリカ人といった飛び道具に頼らずとも、ある程度のチームを組めてしまう貴重な存在。

・投手力
 昨年のW杯において、一番の課題として浮かび上がってきたのが、この投手力。最大の弱点は、タイプ的に似通った投球スタイルの投手ばかりで、格下側にとっての有効な武器である「継投で相手の目先を変える」という戦略が取りづらいこと。エースのアンドレ・ヒューズ、大ベテランのエノルベル・マルケス=ラミレスという「違い」を生み出せる存在はいるものの、大半の投手はこれといった特徴のない、オーソドックスなタイプ。オリジナリティを持った個性派の若手と、今季で38歳と高齢になるラミレスの後継者の発掘が急務。


・攻撃力
 投手力とは対照的に、国際大会でも十分に通用するところを見せたのが打撃力。W杯1次リーグでは、オーストラリア相手に敗れながらも6点を奪うなど、今後に希望を持てる成果を残してみせた。ただ、破壊力という面では及第点ながらも、似通ったタイプ(粗っぽいが当たれば飛距離は抜群の、右の扇風機タイプ)の選手が多い点では、投手陣と同じような課題を抱える。サッシャ・ルッツとジェンドリック・スピアーという、相手をかき回す役割を担う1、2番コンビが機能しなければ、振り回すだけの淡白な攻撃で終わってしまう危険性も。

・守備力
 ドイツの守備面における、最大の課題が遊撃。昨季のW杯では、この穴を埋めるために二塁手スピアーをコンバートした結果、二塁に三塁が本職のドミニク・ウルフ、三塁に守備難のルドウィグ・グラサーを置くという「ファイヤーフォーメーション」を組まざるを得ず、投手陣の足を引っ張る結果となってしまった。もともと、併殺などでの連携ミスなど、細かいところでアウトを取りきれない場面が目立つ。国際大会では、守備が非常に重要になるだけに、内野守備の要でもある遊撃手を早く発掘したいところ。

・傾向と対策
 基本的には、投手陣を一発のある打撃でカバーする戦いになりそう。小技や機動力を駆使するタイプのチームではないものの、芯を食った時のパンチ力はどの打者も備えているので、あれこれと小手先で仕掛けるよりは、むしろ長打狙いで打ってつなぐことを考えた方が、流れを掴みやすいかもしれない。問題は、試合がこう着状態になった時にミスが出ないかどうか。一発長打で流れを変える力はあるが、ミスで大量失点した後で単発で打ち上げても意味がない。守備に優れる遊撃手を発掘・育成しつつ、競った場面でもしっかり守りきれるチームを作り上げたいところだ。

・目標

 欧州3番手という立場でもあり、ヨーロッパ選手権でのベスト4入りは最低限のノルマ。オランダとイタリアの2強の壁は、決して薄くはないものの、ここ最近は代表でもクラブでも競った戦いを見せているだけに、今大会ではファイナリストとなることを目標にしたい。この大会で好結果を残し、かつWBC予選での組み合わせがヨーロッパ勢で固められれば、WBC本大会出場の可能性も高い。