今年9月期の中間報告書で、ヤマダ電機、エディオン、ケーズホールディングス、ヨドバシカメラの大手4社が最高益を記録した家電量販業界。だがこの好調ぶりに反し、11月5日に発表された日本政策投資銀行の調査結果によれば、2012年度の家電量販市場は、2期前の2010年度(6兆円)から一気に25%も縮小し、4.5兆円程度になると予測されている。

 そのため、今後の家電量販業界では「業界再編」がかなり高い確率で起こると見られている。某大手証券会社のA営業部長がこう語る。

「量販店の薄利多売レースはますます激化する。市場規模が6兆円なら上位9社が生き残ることも可能ですが、4.5兆円ならせいぜい6社。これにTPPなどの影響で外資が参入してくれば、もはや再編は必至。残るのは売り上げ1.5兆円規模の3社程度でしょう」

 ちなみに、2011年の3月期決算によれば、家電量販店の年間売上高の上位3社は「ヤマダ電機、エディオン、ケーズホールディングス」。中でも、ヤマダ電機は2兆円を超える売上高を記録し、他の量販店を引き離している。そのため、ヤマダ電機が経営に苦しむ量販店を吸収合併するのではと見る向きも多い。だが、A営業部長はヤマダ電機にも“アキレス腱”があるという。

「ヤマダの“国粋主義”ともいえる国産家電至上主義は、各メーカーが成長を続けた時代には圧倒的な強みでした。しかし、テレビ部門の縮小や不採算部門からの撤退など、国産メーカーの力が衰えた今ではむしろマイナス要因。これからは中・韓メーカーとの太いパイプを持つチェーンが人気となる」

 しかも、日本の家電量販市場には、すでに昨年ラオックスを買収した中国家電量販店の雄・蘇寧電器がいる。世界最大の仕入れ量を誇るアメリカ・ウォルマートの子会社となった西友の家電売り場戦略も、専業の家電量販店を脅かす存在だ。さらに、全米最大の家電量販店チェーン、ベスト・バイも中国参入を済ませ、虎視眈々と日本市場を狙っている。

 やはり、日本の家電量販店が生き残るためには合併・統合しかないのか。じつはたAV家電研究所のじつはた☆くんだ所長は、業界の今後をこう予測する。

「実は、ヤマダ電機は表向きは『純投資』としながら、着々とベスト電器の株を買い足しています。現在、ベストはビックカメラと業務提携していますが、ヤマダのベスト買収が業界再編シナリオの本命でしょう」

 だが、ライバル各社の“ヤマダアレルギー”は強烈なため、そう易々と合併話は進まないだろうとも、じつはた所長は続ける。

「某社の役員も『メーカーも客も従業員も金づるとしか見てない』と吐き捨てるように言っており、ヤマダとの合併だけは避けたいというのが本音。そうなると、一度は提携を解消したエディオンとビックが復縁し、郊外(エディオン)+駅前(ビック)でヤマダに対抗……というシナリオもあり得る。また、上位9社で唯一非上場のヨドバシが郊外型チェーンを買収し、現在の駅前店でも評価の高いサービス展開をするとなれば家電ファンは大喜びでしょう。いずれにしても、2位以下はヤマダより先に動かなければ、情勢は厳しくなります」

 地デジ移行とエコポイント需要の先食いで延命してきた家電量販業界、2012年の大幅な再編で生き残るのは、はたしてどこになるのだろうか。

(取材/近兼拓史)

【関連記事】
高級ブランドを狙った中国製“パクリ家電”が増加中
パナソニックをテレビ事業縮小に追い込んだ中韓メーカーの競争力
「フリースタイルAQUOS」発売でテレビ界に“壁掛け”の波が到来か
今冬、節電需要で売り切れ必至。「こたつ」の電気代は1時間4円以下
大阪の“値切り”文化「大阪人が相手の言い値で買(こ)うてどないすんねん!」