昨日は落合監督の解任を知り溜息の耐えない一日であった。

来期からは高木守道が再び指揮を執ることとなったが、良く引き受けたものである。落合監督が残す遺産はあるが、一方でどうしても落合監督と比べられる事となり、無力さが際立って映る可能性が高いことは十分承知しての決断であろう。

以前の監督時代や解説者としてのコメントを聞く限り、高木守道は決して平均以下の監督ではないと理解している。今のセリーグの監督の中でも、小川監督・原監督と比べればもしかしたら下かもしれないが、真弓監督・野村監督・尾花監督よりは上であろう。しかしプロ野球史上最高の監督と言っても過言ではない落合監督と比べるのはあまりに酷である。


戦術面については落合監督から学んだことを生かして落合監督に近い采配を心がけるのではないかと思うがお手本を超えることは難しく、「似て非なるもの」になるだろう。落合監督の采配から学んだ分、16年前よりはいい戦術を採用できるかもしれないが、落合監督より劣るという部分ばかりが目についてしまう可能性が高いだろう。

また落合監督の凄い所はどんな場面でも動じない胆力である。切羽詰った場面でも驚くほど冷静に判断し、我慢すべきと考えれば我慢できる。 一方で高木守道は以前の監督時代、全く胆力というものに欠けていた。年齢を重ねて成長している部分もあるだろうが、本質的にはなかなか変われないだろう。


落合監督から見て、高木守道は恐らく中日OBの中ではまともな野球談義ができる貴重な人物であり、選手時代の活躍も尊敬できるものであり、また落合監督擁護者でもあり、感謝していると思う。その高木守道が、落合監督が偉大であったことを証明するための生贄にされることは皮肉という他ない。


個人的には高木守道はかつて好きな選手であり、また愛すべき監督であり、現在では最も好きな解説者の1人である。そんな高木守道がこれからぶつかる困難を想うと胸が痛む。人づてに聞いた話であるが、監督就任後のインタビューでアナウンサーがつい落合監督に否定的な発言をした際も、即座にはっきりと否定したそうである。本当に落合監督の良き理解者であり、またフェアに物事を見て思ったことをきちんと発言できるという点で、人格者でもあるだろう。願わくば落合野球の継承者として、来年も今年と変わらぬ活躍を見たいと思うのだが、しかし残念ながら高木守道は監督としてはそのような器ではない。繰り返しになるが、高木守道が駄目ということではなく、落合博満が偉大すぎるということであり、誰がやっても難しいだろう。

勿論落合監督も完璧とは言えなかったかもしれない。例えば10個の長所と1個の短所があったとして、長年やっていることもあり、今はどうしても1個の短所がクローズアップされがちであるように思う。高木守道はこの1個の短所について過度に意識を取られ、恐らくそれは改善するだろうが、10個の長所はポロポロとこぼれていくだろう。その時には、中日ファン・落合ファン・高木ファンとして、「悪いのは高木守道ではない」と主張したい。


困難を承知で引き受けた高木守道は大変立派であると思う。他の候補と言われる人達でも、恐らく落合監督と比べられることを非常に恐れたであろう。引き受け手がなかなか無いと思われる中、落合監督の偉大さを証明するための生贄として自らを捧げ、恐らくはシーズン途中に休養という形で次の監督に引き継ぐことになるだろうが、そうすることで次の監督は落合監督との比較により駄目な監督と烙印を押されることはなくなる。ある種の解毒作業と言ってもいいかもしれない。



来期のことを考えると今から胸が痛いが、生贄として自らの身を捧げた高木守道の男気に敬意を表しつつ、もがき苦しむこととなっても常に暖かい目で見届けていきたい。