まずはじめに、宣伝を一つ。去る火曜日(12月8日)、僕の新刊が双葉新書から発売になりました。“「決定力不足」でもゴールは奪える” です。最大限、真面目に書いたつもりなので、ぜひご一読ください。

さらに言えば、今年は3月にも「日本サッカー偏差値52」という本を刊行しています。世界各国の中で、日本はどの位置にいるのかを相対的に検証した新書サイズの本ですが、それに因み、グループリーグの組み合わせが決まったいま、もう一度、偏差値的な視点で各国の様子を眺めてみることにしたい。少々強引ではありますが。

62スペイン
61ブラジル
57ポルトガル、イングランド
56ドイツ、オランダ
54イタリア、フランス、アルゼンチン
53セルビア、
52ガーナ、コートジボワール
51デンマーク、チリ、アメリカ
50パラグアイ、カメルーン、アルジェリア、メキシコ
49ナイジェリア
48豪州、スロベニア、スイス、
47韓国、ギリシャ、スロバキア
46ウルグアイ
45日本、南ア
43ホンジュラス
42北朝鮮
41ニュージーランド

「日本サッカー偏差値52」は、あくまで世界的なもの。ワールドカップヴァーションでは、残念ながら「日本サッカー偏差値45」になる。

日本は中盤だけなら50近い数字は出せる。さらに言えば、マイボール時に限っては52〜53は出せる。しかし中盤の役割は、攻撃50、守備50。相手ボールを奪う能力を加味すると、偏差値は3〜4ポイント落ちる。

いったい、岡田サンの標榜するプレッシングは、どこへ行ってしまったのだろうか。プレッシングに活路を見いだそうとしていたのではなかったのか。後半なかばで息途絶えたオランダ戦の反省は、その場限りのものだったのか。その後の試合に活かされている様子は全くない。いまやすっかりどこかに葬り去られてしまっている。

アジア予選やB代表クラスを相手にする緩い親善試合では、それが決まらなくても勝つことができた。マイボール時の力で、何とか相手をねじ伏せることができたが、相手のマイボール時の力が上がるワールドカップ本番ではそうはいかない。ボール支配率でも、相手に上回られる可能性が高い。ボールを追いかけ回さなくてはいけない時間が長くなることが予想される。プレスが機能するか否か。客観的に見て、これこそが岡田ジャパンの生命線になる。

それはそのまま、岡田サンの評価にもつながる。今回は相手が強い。世界の優秀な監督を招いても、グループリーグを突破する可能性は高くない。結果を評価の対象にすることは無理がある。岡田サンの標榜するプレッシングサッカーが完璧にできれば、もしグループリーグで落ちても、僕はギリギリオッケーにするつもりだ。日本がダメだったというより、相手が強かった。そう言うべきケースもあるわけだ。

しかし、いまのところ、プレッシングサッカーは完璧ではない。それどころか、唱えているだけのようにしか聞こえない。集団性ゼロ。選手個人の生真面目な頑張りに頼るだけで、監督の力がそこに介在しているようには見えない。このままで3連敗を喫したらまさにブーイング。最後の6ヶ月で、それを覆すことができるのか。僕は、本番での勝ち負けより、試合の中身の方に目がいく。

逆転可能な偏差値の差は、最大5。偏差値45の日本にとって、カメルーン(50)、デンマーク(51)は、番狂わせを起こすギリギリの相手になる。逆に、実力差がストレートに反映されると、2点差負けも十分に考えられる。オランダ(56)に至っては3点差以上の危険がある。たいした危機感も抱かずに、暢気に構えていると、かつてない大敗を喫する可能性がある。プレッシングも決まらなければ、成績もワーストでは救いがない。代表監督みずから標榜するプレッシングの出来映えは、最後までしっかり見届けてやる必要がある。

加茂サンは、プレッシングを標榜しながら完成型を見ずに解任された。岡田サンにその座を譲った。片や岡田サンは、完成型を見ずに本番を迎えようとしている。これではマズイのだ。

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