ブブゼラを頭に・・・<br>[Photos by Kishimoto TSUTOMU]

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 ブラジルの優勝で幕を閉じた南アフリカでのコンフェデ、この大会でもっとも目立っていたのは「ブブゼラ」であった。

 これはプレイヤーの名前ではない。「ブオー、ブオー」と強烈な音を立てる、50センチくらいのホーンのことだ。

 南アフリカのファンは、このブブゼラを吹き散らかすのが大好きで、どのスタジアムも90分間、ブオーブオーという騒音に包まれることになった。これが実にうるさくてたまらないのである。

 どのくらいうるさいかというと、まず隣の人と落ち着いて会話ができない。カメラマンの中には耳栓をしてシャッターを切っている人がいたし、スペインのシャビなどは「なんとかしてくれ」と公に不満を述べていた。監督たちも、いつも以上に声を張り上げていたはずだ。

 この困ったブブゼラについて南アフリカの人々と議論をすると、ほとんど意見が噛み合わなかった。

「僕たちにいわせると、本当にうるさくてたまらないんですよ」

「どうして? 楽しいじゃない。あれを吹いていると、気持ちが昂ぶってくるんだよ。ブブゼラが鳴らないスタジアムなんて、僕らにとっては葬式みたいなものなんだから」

 南アフリカにおいて、ブブゼラはサッカー場の必須アイテムになっているのだ。

 残念ながら、ブブゼラは来年のワールドカップでも猛威を振るうことだろう。FIFAのブラッター会長は、「あれは何とかならないのか」という度重なる記者の問いに、次のように答えた。

「これは南アフリカの文化なので、尊重しなければいけないでしょう。かくいう私も、ブブゼラを一本持っているんですよ」

 このお墨付きは、「バファナ・バファナ」と呼ばれる南アフリカ代表にとっては朗報に違いない。

 彼らはブブゼラが吹き荒れるスタジアムでのゲームに慣れ親しんでいる。コンフェデの準決勝でブラジルを追いつめたのも、ブブゼラの大音量がサンバのリズムを消し去ったからだと囁かれていた。バカな、と笑うなかれ。ブブゼラは、それくらい強烈なのだ。日本代表も早急にブブゼラに囲まれた中で、試合をやるべきだろう。大真面目な提案である。

 それにしても、ブラジルのサンバ、オランダのトランペット、韓国のアリランといった各国固有の応援が詫び寂びのないブブゼラによってかき消されてしまうのは忍びない。本大会では、このブブゼラ公害を巡って観客席で南アフリカ人と外国のファンが殴り合う光景が繰り広げられるかもしれない。

取材・文/熊崎敬