ロシア代表のストライカー、ロマン・パヴリュチェンコはEURO2008で目覚め、3ゴールを上げてチームのベスト4進出に貢献した。
 フース・ヒディンク監督から「眠れる巨人」と揶揄されながら、代表メンバーの座をつかむと、大会前のトレーニングで体重を落とし、切れを取り戻した。そして、FWのパヴェル・プグレブニャクが開幕数日前に負傷したことから、出場機会をつかんだのだ。

 チームメートさえも、背番号19の予想外の活躍に目を見張る。代表主将のセマクは、「ロマンはここまで最大の驚きだね。彼はロシアリーグでは活躍し、過去2シーズンの得点王に輝いたのだが、欧州選手権で今のようなプレーをするとは誰も期待していなかったと思う」と語る。

 彼は代表19試合出場で9得点を記録し、その得点力は、2−1で勝利した予選のイングランド戦で2ゴールを上げたことでも証明されている。しかし、問題は彼のフットボールに取り組む姿勢にあったようだ。
 イングランド戦の活躍で一躍脚光を浴び、メディアに引っ張りだこになったことから、スパルタク・モスクワでも練習を休むことが増え、次第に得点力も落ち、今年4月には先発から外されるようになっていた。ヒディンクは、潜在能力を100パーセント発揮しようとしないパヴリュチェンコにいらだちを覚えていた。
「これまでの試合やリーグでの彼の動きを見て、いらいらすることがあった。プロならば、死にもの狂いで動くべきなのだ。それがプロの責任というものだ。彼とそのことについて話し合い、彼は完璧に実行した。まずフィジカルを整えたんだが、そうなると精神面もついてくる」とヒディンク監督は語る。

 こうしてEURO2008でよみがえった巨人は、今では準決勝スペイン戦での活躍を全国民から期待されるようになった。