今季のインテルの強さは、昨季のそれと比べてもちょっと度が外れている。2年前の夏以来、セリエA全61試合で敗れたのは1試合のみ、サン・シーロでの50試合連続得点記録続行中などストロングポイントはいくらでも挙げられるが、その強さの本質は、目指す高みがちがう者が持つ意志にあるように見える。

 2対0で勝った10日のカターニャ戦後、ミックスゾーンを過ぎるインテルの選手たちに弛緩した表情は一切なかった。試合内容は貫録勝ちともいえる内容だったが、選手たちの視線は1週間後のCLリバプール戦を向いていた。それでいて浮ついたところは一切ない。

 もはやカテゴリーがちがう。インテルをF1マシンに例えるなら、セリエA残留争いをするチームは乗用車レベルにしかない。同じセリエAのビッグクラブでも、現在のミランやローマとは一段ちがうところを狙っている彼らのテンションがひしひしと伝わってくる。
インテルはついに欧州の舞台でも強者たるメンタリティを得た。昨季のCLバレンシア戦で晒した脆さを今のインテルに見つけることはできない。欧州制覇へ機は熟した、といえる。

 おそらく今季のインテルに「ベストメンバー」というものは存在しない。外せないエースとしてのFWイブラヒモビッチはいるが、全てのポジションにあふれている一流選手たちがどんな組合せになろうとも1試合ごとに成長・進化していく。カメレオンのように変化しつつ着実に結果を出す布陣の妙を整えることが、指揮官マンチーニ最大の仕事だ。

「マンチーニは素晴らしい仕事をやっている。今季のインテルは異常だよ。連続して安定性がある」とモラッティ会長自身が驚く。2位ローマに勝点11点差をつけ、もはや国内リーグ3連覇を逃す心配は必要ない。
 欧州カップ戦のエキスパートであるリバプールを過小評価するわけではない。仮に勝ち上がっても、もし準決勝でマンチェスター・UかR・マドリーとあたった場合、彼らの完成度はかなりの脅威になる。だが、十分な戦力と指揮官の成長に加え、何より欠けていたこのタイトルへの真剣な飢餓感が揃った。今季CL優勝本命にインテルを推す。