宮里藍=80を叩き呆然。大ブレーキ!(写真/田辺安啓=JJ)

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「70―80」。何の数字か?全英リコー女子オープン初日と2日目の宮里藍のスコアだ。せっかく4位タイと好発進したのに、2日目は暫定52位位タイへと急降下。たった1日経過しただけで、どうして10ストロークもの差が出てしまったのだろうか。

早朝は暖かく、風もほとんどなかった。午前スタートの選手はスコアが伸びるであろうことは誰にも想像できた。実際、早朝スタートだった佐伯三貴は3アンダー70をマークして通算イーブンパー暫定14位タイへ順位を上げ、不動裕里は4アンダー69、通算3アンダーで4位タイグループへ。もちろん佐伯も不動も、いいゴルフをしたからこそのジャンプアップだが、強風が吹き荒れ始めた午後スタートの選手たちが苦しいゴルフを強いられることは目に見えていた。そして、その通り、午後組の日本勢4名は全員がスコアを落とし、順位を落とした。中でも、宮里藍は出場選手内で最大の落ち方を披露する結果になった。

風が強かったかどうか、暖かかったか寒かったかは、プレーの内容を左右する大きな要素だ。しかし、どうやら宮里の今日の崩れ方には、天候以外に原因があったようだ。1番でいきなりティショットを右へ曲げ、ボギー発進。その後は3パットあり、寄せミスあり。ティショットもアイアンショットも乱れ始め、ボギーばかりが量産されていった。13番からは3連続ボギー。バーディは5番で奪った1つだけしかなく、ボギーの数は8つ。その原因をコーチ役の父・優氏は「コーチの責任」と言った。

初日にダブルボギーを叩いた5番ホールのティショット。優氏の頭の中には「合わせに行ったから右に曲がった」という現象が強く残った。だから初日のラウンド後、「もっと振る練習をしたら、今日はバックスウィングが早くなった。1番も(本当なら)あんな球が出るわけないのに。コーチの責任でもある」。

宮里本人もドライバーは「前半、振り切れていなかった」と感じていた。しかし彼女はそれ以上に崩れた原因をロングパットに感じていた。「ロングパットの調整がうまくいかなかった。途中、悔しくて悔しくて仕方がなかった。イライラしていた」。ロングパットに突然、順手を採り入れたことに対しては「順手のほうが確率が良かった」と後悔してはいないが、宮里が悔やんでいるのは、最終的にはメンタル面の問題だ。「ロングパットの距離感とか自分の弱い部分が出たと思う」。ドライバーが振り切れなかったことも、コーチの責任ではなく「(自分の)気持ちの問題」。そういう意味で宮里は「今日は特別な一日だった」。

強風の中でも、ロレーナ・オチョアはイーブンパーで凌ぎ、2日目も単独首位をキープした。午後スタートのウエンディ・ウォードもカトリーナ・マシューもそれぞれスコアを伸ばし、2位タイへと順位を上げた。技術的に精神的にも強い選手たちは、たとえ強風下でも、どんな状況下でも、やっぱり強さを発揮する。なぜそうできるのか。それこそが、宮里が言う「気持ちの問題」なのだろう。セントアンドリュースは選手たちをさまざまな形で苦しめながら、我々ゴルファーに「本当の強さとは何か」を教えようとしているのかもしれない。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)