宮里藍=暫定4位タイ!ぜひ優勝を狙いたいスタートが切れた。(写真/田辺安啓=JJ)

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メジャー初日に首位に立ちながら予選落ちする選手もいる。メジャー初日に出遅れながらも優勝する選手もいる。大きくスコアや順位が動くのがメジャー。何が起こるかわからないのがメジャーだ。しかし、全英リコー女子オープンの初日に首位に立ったロレーナ・オチョア、4位タイの好発進をした宮里藍にとっては、この「初日」に特別な意味がありそうだ。

「3ヶ月も4ヶ月も前から大会に備えてきた」と練習日から語っていたオチョア。初のメジャータイトルをどうしても手に入れたいと切望するオチョアの意気込みは、初日、6バーディ、ノーボギーで6アンダー67をマークするという快ラウンドを生み出した。5番、8番、9番、10番、15番、17番でバーディ。パー5の17番を除く5ホールのバーディは、すべてウエッジ、9I、8Iといったショートアイアンでグリーンを狙い、1パットで沈めるというパターンでのバーディだった。ショットの精度もパットの精度も抜群だったという証拠。そして、オチョアのような飛距離が出る女子選手にとっては、セントアンドリュースが距離的にかなり短いコースであることも実証された。

だが、それより何より、オチョアの好成績の一番の原動力は前向きな気持ちである。「ここでは何が起こっても受け入れることが大事。バンカーに入っても、ジャスト・スマイル。笑顔でバンカーショットに向き合うことが大切です」。そう言いながら、オチョアは今日、バンカーには1度もつかまっていない。もしバンカーに入ったら、もし何かが起こったら、決して慌てず動じることなく対処しようという心構えがあったからこそ、「今季最高のラウンド」と言いきれるほどのゴルフができたのだろう。

「このセントアンドリュースで初日にいいゴルフができたことは特別な思い出になる」。ゴルフの聖地での思い出は、確かにスペシャルメモリーになるだろう。しかし、メジャータイトル獲得を成し遂げてこそ、本当の意味で彼女の「特別な思い出」が完成されるはず。すべてを受け入れようとするオチョアだからこそ、ゴルフの聖地に受け入れられる――そんな気がしてならない。

宮里藍はスロースターターを自認するほど、これまでは初日の出だしが悪いことが多かった。あまりにも出遅れれば、いくら残り3日間があっても追いつくのは大変。そこでコーチ役の父・優氏は「初日を大事に行こう」と娘に言った。その言葉をしっかり受け止めた宮里は、5番でティショットを大きく右に曲げ、ラフからポットバンカーへと渡り歩いてダブルボギーを喫した直後、6番ですぐさまバーディ。「あれが一番大きかった。いいカンバックだった」。そこから流れに乗った宮里は、ショットが冴え渡り、順手で握ると決めたロングパットに直面する状況もわずか1度だけ。終盤に向かってバーディを重ね、3アンダー70の好ラウンドを披露した。「ここは特別な場所。ここの雰囲気が気持ちを前向きにしてくれる」。

セントアンドリュースに特別な思いを寄せるオチョアと宮里が、特別な「初日」を終えた。2人の明日はどうなるのだろうか。オチョアいわく「天候次第。明日の朝、起きてカーテンを開けるまで(目指すスコアは)わからない」。宮里いわく「明日はもっと風が吹き、もっと苦しくなるだろう。それさえも楽しみながら、気持ちを切り替えてゼロからやる」。2人に「特別な2日目」が来るといい。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)