もはや一流選手と呼べなくなってしまったカッサーノ<br>【photo by B.O.S.】

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 18日にリーガ優勝を決めたRマドリー。マドリー市内でも盛大に祝勝会が催されたが、その歓喜の輪の中にFWアントニオ・カッサーノはいなかった。この若者は、リーガ最終戦を見守ることなく、出身地のプーリア州(南イタリア)に帰っていた。故郷バーリにあっても、もはや誰も彼を偉大な一流選手だと認める者はいない。

 昨年1月にRマドリーへ移籍して2年目のシーズン、かつて寵愛を受けた指揮官カペッロが就任し、ブレイクを期待していたのは誰より本人だったろう。しかしスペイン・メディアからは「肥りすぎ」と揶揄され、起用法を巡りカペッロとも衝突。ただでさえ話題に事欠かない銀河系軍団にあって、カッサーノの名は次第に忘れ去られた。出場時間315分、1ゴール、1アシスト。それがカッサーノの2006-07シーズンの全てだった。

 地元チームのバーリから10代で鮮烈なセリエAデビュー。首都のビッグクラブ、ASローマに移籍した後も、彼は素朴な田舎の青年そのままだった。好きなものを食べ、好きな時を恋人や友人と過ごし、思うままに時間を重ねた。才能に溢れていてもプロとしての自覚が足りなかった。それでRマドリーのような真のビッグクラブで通用するわけがない。

彼は自分に正直すぎたのだろう。かつて天才と謳われたカッサーノもこのまま埋もれてしまうかもしれない。現在は足首故障とも伝えられているが、彼は25歳にして今頃サッカー界の現実に打ちひしがれているに違いない。

弓削高志