大分U-18からトップ昇格して4年目。いまや攻撃的サッカーの象徴とも言える存在だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ7節]大分2-0仙台/4月14日/昭和電ド
 
 大分の勢いが止まらない。6年ぶりにJ1に復帰したチームは、7節・仙台戦で今季5勝目を手にして3位に浮上した。

 試合は序盤こそ大分の武器であるサイドアタックからチャンスを掴んだが、その後はシュートまで持ち込めないことでカウンターを受ける場面が多くなる。片野坂知宏監督は「サイドより真ん中をケアすることを選んだ」と前半途中に3ボランチを配置した。即効性こそなかったが、じわじわと相手の勢いを食い止め、後半の先制点につなげた。
 
 ハーフタイムに「後半の入りから狙っていけ」とDF岩田智輝に助言。売り出し中の東京五輪世代は、攻め上がったスペースを中盤の選手が埋めることで、「安心してガンガン前にいけるようになった」と話す。47分に自陣でインターセプトした岩田は、そのままドリブルで持ち上がり、サイドに開いた三平和司にボールを預け、さらにペナルティエリア内に侵入する。「リターンが来なくてもいいやと思っていたが、目の前にボールが来てラッキーだった」と、本人は屈託のない笑顔でJ1初ゴールを振り返る。
 
 プロ4年目の大分アカデミー出身の生え抜きは、超攻撃的センターバックとして昨季のリーグ戦中盤から先発に定着し、今や大分の攻撃的サッカーの象徴となっている。無尽蔵のスタミナを武器に上下動を繰り返し、クロスを上げる攻撃的なサイドバックは多いが、3バックの一角でありがら攻め上がり、中盤の選手とパス交換で相手を崩し、チャンスに絡む選手はそうそういない。
 
「新しいタイプのDF像を作りたい」とポジションの概念にとらわれることなく攻撃に絡む。これらのクオリティと創造性は、岩田がこれまで無数のポジションを経験したからこそ。
「トップチームに上がるまでフリーマンという感じだった。ユースの時は高校1年でCB、高校2年でボランチとFW、高校3年はボランチ。ジュニアユースの頃もGK以外は全部のポジションでプレーした」
 片野坂監督は、「3バックの右でアグレッシプにアップダウンして、右サイドの攻撃の戦力となっている。得点は期待していなかったが、よく上がってくれた」と若手の成長に目を細める。確かにゴール自体はラッキーだったかもしれない。しかし、あの場面でインターセプトからドリブルで持ち上がり、ゴール前に顔を出したプレーは自らの実力に他ならない。指揮官の期待に応え、持っている力を発揮した結果だ。
 
「東京五輪世代なんで意識はするが、チームで結果を出していれば自ずと道は拓けるものだと思っている。代表ばかり意識してチームでのプレーが疎かになっては意味がない。J1だとレベルアップするし、活躍すると注目度も違うので今を大事にしたい」
 
 東京五輪代表入りに猛アピールする若武者の活躍は、チームのパワーにもなっている。リーグ序盤の話題を独り占めする得点王の藤本に続き、岩田ら大分にはまだまだ注目を集める選手がいる。
 
取材・文●柚野真也(スポーツライター)