岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「シングルリリース」です。

すべてのミュージシャンがそのときイチ押しの楽曲をシングルCDでリリースしていると、みなさん思っていませんか? 実は、そんなことないんです。僕はシングルは出しません。アニメの主題歌などを手がけて、そのアニメの視聴者に向けて出させてもらうとかそういう特別な状況でない限り、シングルはやらないですね。自主的に出そうとは思いません。だって、売れませんから。そもそも、シングルって1000円くらいするじゃないですか。2曲くらいしか入ってなくて。でも、アルバムは10曲前後入っていて2000〜3000円で買えます。絶対そっちのほうが得じゃないですか! あと大抵、シングルの曲ってバージョン違いとか、新アレンジとかしてアルバムに入れるじゃないですか。だったらアルバムだけでいいじゃないですか! 自分がそう思ってしまうので、僕は僕が必要としないシングルを作ろうとは思わないんです。

では、もしシングル曲になりそうな引きの強いええ楽曲ができたときはどうするのか。そのとき、僕は「これをシングルカットしてリリースしよう!」と思う代わりに、「この曲でMV(ミュージック・ビデオ)を制作してYouTubeにアップしてみんなに観てもらおう!」と思います。もともと、僕はネタ重視のインパクトに賭けた楽曲を手がけるタイプのミュージシャンです。だから、みなさんに1〜2回観てもらって、聴いてもらって、笑ってもらえたらそれで満足なんです。そこからさらに岡崎体育のこと掘り下げたいと思った人がアルバムを手に取ってくれる。そこには、何度も繰り返して聴きたくなるような味わい深いスルメ曲を数曲用意しています。僕の入り口となる面白い瞬発力のある曲を思いついたら、それでMVを作る、さらにその曲を軸にしたアルバムを制作する。これが、僕の音楽活動の基本です。でも、まあこれはすべてのミュージシャンに“こうせえ!”と言えることではまったくないです。シングルをバンバン出して売れていれば、それならそれでええし。どのやり方が正しいというものではないと思います。

こんな感じですから、たまに「MUSIC VIDEO」でデビューした岡崎体育さんとかメディアに書かれますけど、それ違いますから。『BASIN TECHNO』という8曲入りアルバムでデビューしております。

おかざき・たいいく 2016年メジャーデビュー。タイアップ曲満載の企画アルバム『OT WORKS』が発売中。TVアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』の新ED曲、「ジャリボーイ・ジャリガール」も配信中。

※『anan』2018年5月16日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・村田真弓 文・梅原加奈

(by anan編集部)