東京〜大阪間を複数のトラックで中継することで、ドライバーの負担を軽減する「中継拠点」が計画されています。建設の主な目的は、物流業界の労働環境改善だといいます。

建設予定地は新東名 下り浜松SA付近

 全国のトラック業者が誰でも利用できる「中継拠点」の建設を、遠州トラック(静岡県袋井市)とNEXCO中日本が共同で計画しています。予定地は新東名高速の浜松SA(下り方面)に隣接するNEXCO中日本の土地で、東名高速東京IC(東京都世田谷区)と名神高速豊中IC(大阪府豊中市)のほぼ中間点にあたります。これを利用することでドライバーの負担が大きく軽減されるといいますが、建設されるおもな設備は駐車スペースと出入場のゲートだけです。


深夜の名神高速で荷物を運ぶ大型トラック。写真はイメージ(佐藤 勝撮影)。

 遠州トラックによると、ドライバーはこの場所で反対方面から来た相方と落ち合い、荷物をトラックごと引き渡したり、牽引するトレーラーを交換したりしてこれを受け渡し、それぞれの出発地に引き返すという利用方法を想定しているといいます。

「これまで、ひとりのドライバーが東京から大阪まで荷物を運ぶ場合、1泊2日、あるいは2泊3日と、非常に拘束時間の長い勤務になっていました。この拠点を使って荷物を中継すれば、それぞれのトラックの走行距離は半分になり、ドライバーの宿泊数削減や日帰り勤務も可能になります」(遠州トラック 担当者)

「トラック中継拠点」の敷地には、一般的な大型トラック約30台ぶんの駐車枠を確保。利用料は年会費に加え、中継1回あたり600円程度を想定しているといいます。同施設は高速道路内の施設ではないため、高速道路から利用する場合は浜松SAのスマートICからいったん高速道路を下りて同施設に入場し、荷物の中継を終えたあと反対方向のスマートICから高速道路に乗って引き返します。また、同施設内では待ち合わせのための待機ができませんが、そうした場合は、上下線の浜松SAの駐車場や休憩施設の利用を想定しているそうです。

 取材時点(2018年4月18日)では、東京や大阪の大手トラック業者を中心に利用意向調査を行っている段階ですが、「採算性を最終判断したうえで、早ければ2018年夏に営業開始したいと考えております」(遠州トラック 担当者)といいます。

きちんと「家に帰れる」勤務を実現したい

 トラックの中継拠点そのものは以前から事例があったそうですが、こうした中継施設を1社だけでなく、ほかの業者も利用できるようにする例は日本初とのこと。人手不足や長時間労働といった物流業界の課題解決が狙いです。

 遠州トラックの担当者は、「『働き方改革』のもと、残業時間や拘束時間の削減が求められるなかで、きちんと『家に帰れる』働き方が業界に広がれば、『仕事がきつい』『労働時間が長い』といった物流業界に対するマイナスイメージを変え、若い世代のドライバーが増えることにつながるのでは、と考えております」と話します。

「中部地方に拠点を持つ物流会社として、業界の役に立つ中継施設を作りたいという思いが以前からありました。最初は同一の業者が所有するトラック同士の中継から始めますが、いくつかの課題をクリアし、異なる業者間の中継もできるようになれば、さらに利用が広がっていくでしょう」(遠州トラック 担当者)

 遠州トラックはこの「トラック中継拠点」のほかに、荷物を中継する物流センターの建設も構想しているといいます。人手不足や労働環境の改善についてさまざまな取り組みがあるなかで、ひとつの荷物や行程を複数のトラックで担当する「中継輸送」に力を入れていく考えです。

【地図】「トラック中継拠点」の建設予定地


「トラック中継拠点」は、東京と大阪のほぼ中間地点に建設される予定(国土地理院の地図を加工して作成)。