クリニックに家庭血圧計を持参し測定精度を確認しよう(depositphotos.com)

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 世間には「高すぎ」ても「低すぎ」ても、不都合なものがある。物価、気温、目標、身長、プライド......。血糖値も血圧値も思い当たる。

 とりわけ脳卒中の高リスク因子になる「血圧値」が、梅雨空や女心のようにあやふやなのは、不安この上ない。ましてや「家庭血圧計」の測定値に大きな誤差があれば、何を信じていいのか右往左往するだけだ。

家庭血圧計による測定値の69%は5mmHg以上、29%は10mmHg以上の誤差が

 アルバータ大学(カナダ)のJennifer Ringrose氏率いる研究チームは、家庭血圧計の測定値のおよそ7割に誤差があったとする研究を『American Journal of Hypertension』7月号に発表した(「HealthDay News」2017年6月14日)。

 研究チームは、オシロメトリック法の家庭血圧計を自宅に保有し、上腕の周囲長が25〜43cmで収縮期血圧(SBP)80〜220mmHg、拡張期血圧(DBP)50〜120mmHgの患者85人(平均年齢66.4歳)を対象に、「家庭血圧計で測定した血圧値」と「訓練を受けた測定者がゴールドスタンダードである水銀式血圧計」で測定した血圧値を比較した。

 その結果、「家庭血圧計」による測定値の69%は5mmHg以上の誤差があり、29%は10mmHg以上の誤差が認められた。

クリニックに家庭血圧計を持参し測定精度を確認しよう

 この誤差をどのように判断すべきだろう?

 Ringrose氏は「血圧値が不精確なら、健康に深刻な悪影響が及ぶ可能性がある。監視と高血圧治療によって最悪の事態は回避できるものの、家庭血圧計の測定値が精確であるかどうかを確認しておく必要がある」と指摘する。

 糖尿病に関連した心疾患治療が専門の米ノースウェル・ヘルス・サウスサイド病院のRobert Courgi氏は「家庭血圧計の精度が上がれば、高血圧治療が成功する確率がさらに高くなるはずだ」と話す。

 Ringrose氏は「家庭血圧計の測定値を血圧管理の主な指標とする場合は、クリニックでの測定値と比べ、複数回の測定値に基づいて治療を決定すれば、家庭血圧計による誤差は最小限に抑えられる。したがって、家庭血圧計は患者自身が血圧を管理するだけでなく、医師が患者の全般的な状態を把握できる有効なツールになる」と説明する。

 米スタテン・アイランド大学病院の脳卒中専門医であるYasir El-Sherif氏は「小規模な研究なので、早急に結論づけられないが、懸念すべき結果だ。家庭血計圧を使用するなら、1度はクリニックに家庭血圧計を持参し、クリニックでの測定値と比べれば、精度を確認できるだろう」と勧める。

なぜ家庭とクリニックで血圧値が違うのか?

 家で測った血圧値とクリニックで測った血圧値が違うため、「家庭血圧計は精度が低いのではないか?」と思いがちだ。だが、実状は違う。

 血圧計は「コロトコフ音」を聴いて測定する「水銀式血圧計」、「アネロイド式」とセンサーで測定する「電子式血圧計」があり、それぞれ手首式と上腕式に分かれる。水銀式とアネロイド式の精度は変わらないが、上腕式は手首式より精確だ。

 家庭血圧計は、上腕式デジタルの「自動血圧計」が多いが、手首式は巻き方が不完全の場合や、不正脈などがある場合は精確に測れない。一方、クリニックの血圧計は「水銀式」か「アネロイド」が主流だが、自動ではなくトレーニングを受けて熟練した医療スタッフがコロトコフ音を聴き脈を診ながら測定する。

 つまり、マンシェットを正しく巻き、一定のトレーニングと経験がなければ、「コロトコフ音」を精確に聴き取るのは極めて困難だ。しかも、血圧は毎日、時間帯によって刻々と変動している。クリニックでは緊張して血圧が上がる人も、自宅の方が高い人もある。クリニックでコロトコフ音を聴きながら精確に測定した血圧値と、自宅で測定した血圧値に誤差が生じるのは、やむを得ない。

 したがって、家庭血圧計の誤差があるかどうか知りたいなら、クリニックに家庭血圧計を持参し、家庭血圧計で測ってもらい、測定値を照らし合わせてみるのが賢明だ。測り方を正しくチェックしてもらえる。

血圧を精確に測るためのチェックポイント

 血圧を精確に測るためのチェックポイントを簡単に確認しておこう(参考:高血圧labo「血圧計の精度が心配な方へ!タイプ別の特徴まとめ」http://kouketuatu-labo.jp/archives/5739)。

●マンシェットは正しく巻けているか?(上腕に巻くときは指1本入るぐらいのゆるみが必要)
●服で圧迫してないか?(袖をまくり上げて腕を圧迫すると精確な値は出ないので、測る方の腕は脱ぐ)
●腕は心臓より高い位置に置いているか?(低い位置なら精確な値は出ない)
●起床後はトイレに行ったか?(椅子に座りながら朝食と服薬前に測る)
●マンシェットのマジックテープが劣化していないか?(マジックテープが古くなると、しっかりと固定できない)
●血圧は2回測り、平均を取っているか?(測り方が悪いと2回の測定値の誤差が大きくなる)

 さて、今年は『ポケモンGO』が血圧対策に有効という論文が話題をさらったが、40代〜50代のプレイヤーが少なくないらしい(参考:JCnet「ポケモンGOが血圧対策に有効?米論文で」http://n-seikei.jp/2017/04/post-43798.html)。

 測定値の誤差に一喜一憂するくらいなら、ポケモンGOにあやかって、血圧を下げるモチベーションを高めるのも手かもしれない。
(文=編集部)