【木村和久連載】ゲン担ぎだけじゃない。実は大事なゴルフのルーティン
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第95回
「ルーティン」という言葉を直訳すると、お決まりの所作、となります。
最近のスポーツでルーティンが有名になったのは、ラグビーの五郎丸選手です。あらゆるメディアで何度も取り上げられ、子どもから大人までみんなが真似をした、あの”拝みのポーズ”ですね。どういう思考法で、あれをやるのかわかりませんが、とにかくゴールをばかすか決めるのですから、ルーティンさまさまです。
まずは、ティーショットのルーティンの所作から。
案外見落としがちなのは、ティーグラウンドに立ったときの、方向の取り方です。大事なことは、ティーグラウンドに横から入らず、後ろから入ること。横からしか入るところがない場合は、5、6歩下がり、真後ろからコースに向かって歩いていって、コースの方向取りをするのがいいでしょう。
コースに向けて、ドライバーを真っ直ぐ伸ばして「ここを狙えばいい」とかやったりするでしょ。それと同様、ティーグラウンドの真後ろからコースをとらえることで、スクエアなスタンスが取りやすくなります。
でも、たいがい4人でラウンドしますから、自分だけティーグラウンドを歩いて回るのも気が引けます。そこは、ケースバイケースです。
正しい方向を取ったら、次はショットに移りますが、私は打つ前に1回だけ素振りをします。これが、自分のルーティンかな。軌道確認もあるのですが、トップが浅めになることが多いので、ゆっくり素振りをして、トップを深く、そして「タメを作るんだ」と意識させます。
それから構えて、ボールのそばにクラブフェースをあてがいます。そのとき、何か違和感がないかを感じ取ります。フェースが左を向いていないか、ティーが低くないか、葉っぱが落ちてないか、自分が立っているところは砂地で足が滑りやすくないか……とかね。
まあ、いろいろと気づくのですが、すでに打つ気まんまんなので、細かいことを気にする前にたいてい打ってしまいます。その結果、うまくいくのが半分ぐらい。あとは、流行りの”東京タラレバおやじ”全開で嘆きまくります。
「なんだよ、ティーが高かったから、テンプラだよ」とか「ティーグラウンドが傾斜していたから、フックボールになった」とか、言い訳ざんまいです。
ルーティン中に少々違和感を覚えても、微動だにしません。それは、あとでぼやくための”言い訳ネタ”として取っておきます。だって、条件が完璧だとしても、大したショットをしないのですから。
ルーティンは、イコール、ティーショットみたいに思っている人がいますが、実はセカンドショット以降のほうが、ルーティンは大事だと思います。
例えば、コースで渋滞が発生して、前の組がなかなか移動しない。その挙句、5分待ってようやく打つことに。ピンまではおよそ150ヤード。うずうずしているから、「ほんと、待たせやがって。さあ、6番アイアンでガーンとかましますか」なんて言って、すぐに打ってしまいます。これがいけません。
俗に言う”待ち疲れ”というやつで、ろくなショットが出ません。
じゃあ、どうすればいいのか。
前の組がそろそろ終わると思ったら、一度、ボールから10歩ほど下がります。そして、だいぶ待たされたんだけど、心の中では「今しがた来た」かのように、ボールのところまで歩いていきます。通常どおり、ライを見て、きちんと方向を取って打てばいいのです。
この、気持ちの切り替えが大事ですね。
パターも同様です。ナイスオンして、バーディーチャンス到来。上りの6mながら、さほどラインは難しくありません。ただ、周りを見ると、ひとりだけバンカーで難儀しています。たまりかねた同伴メンバーは、10mぐらいのパットを「お先に〜」と打ってしまいました。
そこで、こっちもバーディーパットのラインが読めて、早く入れたくてしょうがない。「イメージが消えないうちに入れなきゃ」と思って、「じゃあ、オレも(先に)打つか」となるわけです。が、これもまた、いけません。
焦って打つから、たいがいイメージどおりの結果にはなりません。
ルールどおり、全員がグリーンに乗ってから、遠い人から順番に打てばいいのです。待っている間は、ラインをカップの逆から見たり、左右から傾斜を確認したりしていればいいのです。これが、大事です。
要するに、すべてのショット、特にグリーン上では「お先に」は危険です。自ら”禁止”にしたほうがいいでしょう。
いい結果をもたらすには、ルーティンが結構大事なんですよね
ちなみに、パターのルーティンですが、これは時間のある、なしでかなり違ってきます。時間があるなら、必ず逆方向からも見るべし。加えて、自分で決めた距離を、必ずエアで打ちましょう。要は素振りですが、パターは距離感が命ですから。「これぐらい打つぞ」と思って、実際に打てることが重要です。
すべてのショットにおいて、ルーティンを守って打つことがいかに大切なことか。焦ったり、さぼったり、ルーティンをおろそかにすると、ロクなことがありません。
ルーティン、それは「心の余裕の表れ」。
自分では、そう解釈しています。
木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。
『89ビジョン〜とにかく80台で回るゴルフ』好評発売中!
詳細はこちら>
■ゴルフ記事一覧>