「ゴールデンカムイ」の料理を完全再現

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鹿肉の中でも最も美味といわれる背の部分は、想像を超えていた。

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血が滴るほどにほんのり炙られた鹿肉を頬張ると、レアの焼き加減らしく肉のねっとりとした食感が舌に絡みついてくる。

味付けは、塩をふったシンプルなもの。ひと噛みすれば、肉が持つ旨みがジュルリと染み出る。ふた噛みすれば、肉の耽美な甘みが口の中に広がっていく。

“絵に描いた餅”など、とんでもない。口の中が北海道の大地の恵みに満ちてくる。

やってきたのは、「マンガに登場するあの料理は本当に美味しいのか?」がコンセプトの「渋谷道玄坂ゴールデンカムイ軒 supported by 渋谷百軒店ノ小屋」。明治時代末期の北海道を舞台にしたマンガである、「ゴールデンカムイ」の作中料理を再現した“ジビエ料理屋”だ。

日露戦争帰りの元軍兵とアイヌ民族の少女が伝説の金塊を求め、陸軍第七師団や新選組の残党らと戦いを繰り広げる本作。当時の北海道の様子が丁寧に描かれているが、ただの冒険活劇ではない。何と言っても、作中に登場する食の描写が秀逸。登場するアイヌ料理は強烈な印象を残し、登場人物たちが美味そうに食らう様子と相まって、食欲をとにかく刺激してくるのだ。

「エゾシカの塩焼き」にすっかりやられてしまったものの、至福のときはまだはじまったばかり。「ウサギのチタタ(プ)の汁物」は、透き通るような汁。細かく刻んでつみれにしたウサギ肉の脂が溶け出して、コクと旨みが加わっているが臭みもクセもなく、あっさりとした風味が特徴。つみれは肉の旨さが詰まり、シャキッとした刻まれたネギがアクセントとなっている。

「子持ち昆布の串揚げ」は、粒ぞろいの卵を備えた昆布が、黄金色の衣を纏った見た目も麗しい一品。サクッと衣を噛むと、卵が口の中で奏でるのはプチッ、プチッという破裂音。しかも、昆布を揚げているのは入手困難なシャチの脂肪を使用した油。噛むごとにジュワッと、甘みと旨み十分のジューシーな脂が溢れ出てくるのだ。

野性味に満ちた料理が続く中、箸休めとして出されたのは「松前漬け」。カズノコとスルメイカの歯応え、そして昆布のぬめり。醤油漬けされた食材の心地よい食感が、あとを引く美味さを生み出している。

そして、今回のコースメニューでメインと言える「熊の炙り焼き」。炭でじっくりと炙ったヒグマの肉は、熊のどう猛さを表しているかのように噛み応え十分。醤油ベースのたれで味付けされた濃厚な味わいで、噛むごとにレバーを思わせる風味が加わる。

続いて、湯気を立て大鍋で運ばれてきたのは、アイヌの伝統料理である「ユ(ク)オハウ」(鹿肉の鍋)。本来はニリンソウを使うが、今回は行者ニンニクと空芯菜を使用。塩味で薄く味付けされた澄んだ汁をズズーッと流し込めば、行者ニンニクの香ばしい風味が鼻腔を抜ける。すっきりとした汁も、味噌を加えれば濃厚でまろやかな味わいに変化。すっかり脂が鍋に染み出した鹿肉も、口の中で繊維がホロリと崩れるほどの柔らかさ。菜類の食感も旨みを囃し立てている。

それにしても、野性味溢れるはずなのに、どの料理もどこか上品な味わい。しかし、それもそのはず。作品のイメージ通りに、全ての料理で化学調味料は一切不使用。食材そのものの味が自然の旨みを作り出しているからこそ、汁の最後の一滴まで惜しくなるほどの風味が実現しているのだ。

7品目にも及ぶコースを締めくくるのは、甘味である「カエデの氷柱」。冬にカエデの樹液が垂れながら凍り、そのつららに見立てた一品となっている。懐かしいアイスキャンディを思わせるメープルシロップの味わいが、漫画の世界から現実に戻る余韻を感じさせる。

マンガの描写を参考にしながらレシピを再現した「渋谷道玄坂ゴールデンカムイ軒 supported by 渋谷百軒店ノ小屋」。実は9月22日(木・祝)にオープンする一日限定料理店で、完全予約制となる。受付は特設サイトで9月4日(日)までで、当選者はコースメニュー全品を無料で食べられる。

前代未聞のマンガ飯の再現店だが、味は保証付き。想像を超えるような「ゴールデンカムイ」の世界を、是非体験してほしい。※()は小文字表記【ウォーカープラス編集部/コタニ】