「北欧女子オーサのニッポン再発見ローカル旅」著者、オーサ・イェークストロムさん

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日本のアニメとマンガに感動し、スウェーデンからやってきた“北欧女子”のオーサ・イェークストロムさん。2011年に日本へ移住し、イラストレーター・マンガ家として活躍中だ。日本での生活で出会った驚きや発見を自らを主人公に描いたブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」から、4コママンガを中心に収録されたエッセイマンガ「北欧女子オーサが見つけた日本の不思議」が発売され、更なる注目を集めている。そして今年7月に発売された待望の最新刊「北欧女子オーサのニッポン再発見ローカル旅」では、沖縄、京都、南東北、広島、福岡へと赴いた体験をつづっている。今回、特別に本著の見どころや日本の魅力について、オーサさん自身に語ってもらった。

【写真を見る】「海ブドウやムカゴがおいしかった!」と話す、日本通のオーサさん

――そもそもオーサさんが日本に来た理由について教えていただけますか?

初めて日本のことを知ったのは、13歳のときにスウェーデンのテレビで「セーラームーン」のアニメを見たことです。日本のマンガとアニメを発見して、とっても好きになって、自分もマンガを描くようになりました。それから日本に行ったり来たりをしながら、スウェーデンでマンガ家としてお仕事をして、でも、やっぱり日本が恋しくて(笑)、2011年に日本に引っ越しをしました。ですので、きっかけはアニメとマンガですね。

――スウェーデンでは日本のアニメがたくさん放送されているんですか?

20年くらい前はあまりありませんでした。多分、「セーラームーン」が初めて。スウェーデンのテレビで日本のアニメとして放送されて、ただ、残念ながら「暴力的な表現が多い」という理由で途中で放送中止になってしまいました。でも、みんなで必死に手紙を書いてテレビ局に送ったら、また放送してもらったりしたことがありました。好きなキャラクターはいっぱいいますけど、(月野)うさぎさんが一番好きです。

――それだけ人気だったということですね。

そうですね。好きな人は本当に大好きでした。

――日本語がとてもお上手ですが、言葉は日本に来てから覚えたんですか?

2007年に9カ月ほど日本に住んでいたことがあって、そのときにも日本語を勉強したんですけど、当時は勉強をする気が全然なくて(苦笑)。日本語の勉強よりもマンガを描きたかったので途中であきらめてしまい、スウェーデンに戻りました。その後、日本に来てみて、日本語をほとんど全部忘れてしまっていたので(苦笑)、再スタートといいますか、1年3カ月、日本語学校で勉強しました。

――日本に来る前に抱いていた日本の印象と、実際に来てから感じた日本の印象で違いはありましたか?

違いはありました。日本に来る前は、アニメやマンガから受けるイメージしかありませんでしたし、アニメやマンガでは、わからないこともたくさんありますよね。実際に日本に来てみて、匂いとか地形とか、音とかはビックリしました。日本の空気はスウェーデンの空気と全然違っていてワクワクしましたね。あとは、アニメやマンガで見たものを実際に見たとき、とても感動しました。例えば、東京タワーとかポッキーとか、おにぎりとか。

――なるほど。アニメやマンガの世界に出てくるものを実際に見て、ということですね。

そうそう。セミの鳴き声とか、信号の音とか、それから、日本はどこでも“曲”がありますよね。駅もそうですし。そういうところが驚きました。

――今回、それぞれ訪れた場所について教えてください。南東北について、今振り返るとどうでしたか?

南東北はもともと遊びの一環として行きました。やっぱりキレイでしたね、すごく。景色がキレイで、野菜と果物がとっても美味しくて、しかも安くて。それが印象的でした。中でも一番印象的だったのは、ぶどうです。あんなに美味しいぶどうが存在していたことを知らなくて、もちろんあれほど美味しいぶどうは食べたことがなかったので、本当にすごいと思いました。

――スウェーデンのぶどうとは違いましたか?

はい、全然違う味でした。紫のぶどうは少しワインの味に近かったです。濃くて、本当に美味しかったです。でも、ビックリしたのは、日本人はぶどうを食べるときに皮をむきますよね。「へー」って、驚きました(笑)。

――日本人は基本的に果物の皮をむきますね。

何でもむきますよね。基本的にスウェーデンでは果物はそのまま食べます。

――著書にもありましたが、魚とか丸ごと食べたりするのに果物は皮をむく、と(笑)。

そうそう(笑)。あとは海老の天ぷらの尻尾も食べますよね。食べない方もいらっしゃいますが。

――南東北に行かれた季節は?

9月でしたので、それほど寒くはなかったです。シルバーウィークに行きました。

――シルバーウィークという表現も使われるんですね(笑)。

はい。これも初めて聞いたときはビックリしました(笑)。シルバーウィークもあるんですかって(笑)。

――では次に、福岡について教えてください。

福岡は、ほとんど大川(市)に行きました。以前のハウスメイトが今、大川で仕事をしていたので。その人と一緒に仕事をすることになって、あとは東京から他のハウスメイトも来たので、仕事ですが、とっても遊び的な感じでした(笑)。大川は日本ではそれほど有名ではないですよね。京都とかは有名な観光地ですけど、大川は少し違っていて、でも、逆にそういうのも面白いかなと思っています。そういう小さい町に住んでいる日本人はどういう方法で暮らしているのか、考え方はどうなのか、どういう違いがあるのか、といったところが、やっぱりそこはすごく面白くて、あと、みんな本当に優しかったです。これまで自分が訪れた中で、特に地方の方は自分の“街”に誇りを持っていると感じていて、特に大川はそれが強かったですね。

――確かに、日本人は自分の出身地への誇りを持っている方が多いと思います。

歴史的な背景とか、いろいろな理由があると思いますが、日本人の素敵なところだと思います。それから、大川で感じたのは、都会とは違った厳しいところもあるんだなということです。

――厳しいところとは?

ビックリしたのは、女性が人前ではあまりお酒を飲まないようにしていることです。やっぱり、そういうコミュニティの背景の影響が強いんですけど、逆にプレッシャーになってしまうんじゃないかなと感じました。男性の友だちは「全然、遊べない」と言っていました。「すぐに噂になってしまうから、他の町に行って遊んでいる」と言っていました(笑)。

――なるほど(笑)。ちなみに、「海に入りたかった」と話していた沖縄はいかがでしたか?

良かったです!沖縄は、ずーっと行きたかったんです。日本に来てから5年間、ずっと行きたくて、やっと行けるようになって、とても嬉しかったんですけど、12月だったので、実は寒かったです(笑)。

――せっかくの沖縄なのに、「冬に行っている」と思って(笑)。

はい(笑)。でも、スウェーデンは寒い国なので、たぶん、冬の沖縄の海の水温はスウェーデンの夏の海とほとんど同じだと思います。私はどうしても海で泳ぎたかったんです(笑)。編集長とずっと一緒に行動していて、毎日「今日は海に行きますか?」と質問を繰り返しては「すみません、今日は天気が悪いですし」と返されていました(笑)。でも、最終日の朝に、ちょっとだけ、フライト前の時間にやっと行けて嬉しかったです。次は、夏に行きたいと思います。

――次に広島についてですが、広島は過去にもご自身で行かれたのと、ご両親とも行かれたことがあるんですよね。

そうです。広島は素敵ですね。私はもともと広島が好きでしたし、両親は日本の中で広島が一番好きになりました。さらに今回は新しい経験ができて、やっぱり楽しかったですね。思い出は、お好み焼きと農家。お好み焼きをいろいろ食べてみたのは楽しかったですし、田舎のほうに行って農業を体験したのも印象的でした。

――田んぼを近くで見たのは初めての経験ですか?

はい、実際の田んぼは見たことがありませんでした。スウェーデンにはありませんし。スウェーデンにはジャガイモの畑とかはあるのですが、なぜか私、お米は地下で成長すると思い込んでいて、実際に田んぼを見て「えー!」って(笑)。

――では、最後に京都について教えてください。

京都では舞妓さんの格好もして、とても楽しかったです。着物は初めてで、みんな「着物はきついですよ、きついですよ」と言っていたのですが、わりと平気でした。ただ、カツラは少し辛かったんですね(笑)。でも、たぶん舞妓さんの格好をするのは、ほとんど日本人じゃなくて外国人ですよね。その前にも京都で舞妓さんを見たことがあって、そのときもすごくワクワクしたんですけど、後から考えると、それはたぶん、本当の舞妓さんじゃなくて、舞妓さんの格好をした外国人だったんじゃないかなと。とても英語が上手でしたし。そういう意味では、ちょっと純粋なところを失ってしまったかもしれません(笑)。

――今回巡ったエリアのなかで、これが特に美味しかったという食べ物はありますか?

私は、海ぶどうが大好きです。魚市場に行って、いろいろなおいしい刺身を作ってもらったんですけど、一番食べたのは海ぶどうでした(笑)。あとはムカゴとか、アケビとか、東京ではあまり見たことがなくて、まだまだ日本で発見していない食べ物がたくさんあるんだなと気づかされました。

――今後行ってみたいところは?

いっぱいあります。四国はまだ行ったことがないので、まず四国に行ってみたいですね。四国でルートがあるじゃないですか。四国八十八ヶ所、回ってみたいです。あとはうさぎ島(瀬戸内海の大久野島)に行きたいですね。

――そういった情報はどのようにして仕入れているんですか?

友達からです。ほとんどは外国人の友達ですね。あと、行ってみたいのは、アートがたくさんある島…瀬戸内海の直島ですね。友達が最近、直島に行って、「日本の中でここが一番美しい場所」と言っていました。

――今度は、普段のオーサさんについて教えてください。好きなおでかけ場所はありますか?

私は高円寺に住んでいるので、高円寺の周辺に遊びに行くことが多いですね。最近は少し忙しかったので、あまり行きませんでしたが…。

――高円寺は8月の阿波踊りも有名ですね。

はい、あります、あります!あれはとても楽しいです。

――日本のお祭りの印象はいかがですか?

夏祭りは大好きですし、花火も大好きです。でも、8月はスウェーデンに帰ることが多いので、少し残念です。

――浴衣はお持ちですか?

はい、2着持っています。

――「ラーメンが好き」と伺いました。特に好きなラーメンの種類はありますか?

とんこつラーメンと味噌ラーメンが好きです。

――ラーメンは日本に来てから初めて食べたんですか?

そうです。日本に来る前は食べたことがありませんでした。

――スウェーデンには日本食のお店もたくさんあるんですか?

お寿司屋さんはたくさんあります。ただ、日本人がやっているかというとそうでもありませんし、お寿司も中華料理もタイ料理もあるお店が多いですね。そういう店はちょっと“怪しい”と言いますか(苦笑)、あんまり日本の味ではないですね。でも、ストックホルムにはラーメン屋さんが一軒ありますよ。値段は少し高いんですけどね。

――海外の方に「日本は良いところ」を伝えるとしたらどんなふうに伝えますか?

初めての方でしたら、ただ来るだけで日本を楽しめると思います。初めて行く場所は全部が新しくて、面白い発見がたくさんありますよね。あと、お花見、桜が咲いている季節もおすすめですね。あるいは紅葉。私は桜が大好きなので、春をおすすめします。あと、これは興味によって違いますけど、アニメやマンガが好きな方だったら、秋葉原とか中野ブロードウェイをおすすめしますね。

――中野ブロードウェイ、高円寺は近いですね(笑)。

はい、中野ブロードウェイ大好きです。

――スウェーデンの方の日本に対する印象は?

スウェーデンの人は、日本にいいイメージを持っています。「日本に行きたい」と考えている人は多いと思います。

――では逆に、スウェーデンのおすすめポイントは?

夏に行くことを絶対におすすめします。あるいは、オーロラを見たいのであれば冬場、冬に一番北の方がいいですね。私もまだ行ったことはないんですけど。夏だったら、島にとっても古い町があるのですが、そこは「魔女の宅急便」にインスピレーションを与えた町としても有名で、本当にキレイなところなのでおすすめです。

――それでは最後に、読者の方に著書の注目ポイントを。

場所で言うと、大川ですね。もちろん、この本の中に自分の地元があるなら、そこが一番楽しいかもしれませんが、大川はなかなか行く機会のない場所でしょうし、新しい勉強になるのではないかなと思います。【ウォーカープラス編集部/浅野祐介】