対馬から略奪の仏像、返還に応じない韓国の思惑

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日本の寺院から盗み出された仏像が韓国

長崎県対馬市の寺院で仏像が盗まれる事件が多発しています。今回は通報を受けた対馬南署が厳原港から出国しようとしていた韓国人4人を窃盗の疑いで逮捕し、仏像を取り戻したということですが、2年前には同じく対馬の神社・寺院から韓国人の窃盗団により仏像などが盗まれ、韓国に持ち出されました。

この事件の犯人はもちろん韓国で逮捕され、韓国の裁判所で有罪判決を受けました。日本の民法によれば、仏像の所有者である日本の寺院は、これを権限なく占有する韓国の寺院に対し返還を請求できることになるわけですが、ことはそう簡単に運びませんでした。


仏像返還に関し韓国裁判所は驚くべき決定を下す

盗まれた仏像を占有する韓国の寺院は、「この仏像はもともと当寺院のものであり、かつて倭寇あるいは豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本に持ち出されたものだ」として、日本の寺院への返還を拒否しました。そして、この寺院は韓国で仏像の返還を差し止める仮処分を申請したのに対し、韓国の裁判所は「日本の寺院が仏像を正当に取得したことが訴訟で確認されるまで、日本への仏像の返還を禁止する」との驚くべき決定を出したのです。

仏像の文化財としての価値が高いことを知った韓国のメディアや学者などが、「本来は韓国のものであって、日本が返還を求めるのであれば自ら入手経路を明らかにすべきだ」として、日本への返還を拒否する方向で世論を形成していったことが背景に存在します。これに対し、日本は文化財不法輸出入等禁止条約(ユネスコ条約)に基づき、韓国政府に文化財の返還を何度も要求しているものの、いまだに韓国政府は応じていません。


日本は文化財管理を厳重にするなど、早急に手を打つ必要がある

日本国内の常識では理解できませんが、韓国国内では、おそらく伝統的に存在する反日感情のみならず、「日本は韓国から略奪した文化財を返さないでいるのに、なぜ韓国の方だけ返さなくてはならないのか」という一方的な被害者感情があって、それが盗みを半ば正当化しているものと想像します。

ただ、今回捕まった韓国人を含め、数多く出現している窃盗団が「日本の寺社は警備が手薄で、盗んで売却すればいい金になる」と述べているように、一皮むけば、単純な金銭欲が動機になっているに過ぎません。こうした文化財窃盗団は、今後ますます組織性を高めて犯行を繰り返していくことが予想される以上、日本も文化財管理を厳重にするなど、早急に手を打つ必要があるかもしれません。


【名畑 淳:弁護士】


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