「現代の若者」は育たない? 舞妓さんの美しさに学ぶ「人を育てる力」と「育つ力」。

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突然ですが、「舞妓さん」を見たことはありますか? 白塗りに紅をさし、着物を纏ってしだれた帯を揺らし、鈴の音と共にしゃなりしゃなりと歩く様は、何とも風流で美しいものです。外国からの観光客だけではなく、日本人であっても、思わずシャッターを切りたくなってしまうのが頷けます。
そんな美しい「舞妓さん」が、実は10代の若者だということを知っていましたか? 彼女たちは、世間で「JK」なんて呼ばれている女の子と同じ、正真正銘のティーンズなのです。……そうは言われても、彼女たちにはどう見たって「JK」世代とは思えない気品が漂っています。女性として憧れすら抱いてしまう、凛とした美しい横顔。その写真に惹かれて手に取ったのが、今回ご紹介する『舞妓の言葉』という一冊です。

『京都花街、人育ての極意』なんてサブタイトルがついている通り、舞妓さんの成長や彼女たちの言葉を通して、世間でよく耳にする「人材育成」「人を育てる」ということについて考えさせられる内容となっています。確かに、「JK」が「舞妓さん」になると考えると……少し覗いてみたくなりますね。

考えてみればこの二〇年以上、若い人たちは、やる気がない、粘りがない、我慢ができないなどと、ネガティブな表現を用いて形容されています。今の若者を育てるのは難しい。すぐに辞めてしまう、壁があると乗り越えられないなど、育成の現場の人から嘆く声を聞くことも多いです。
でも、若者が変わったのでしょうか。いつの時代も若者は、未経験で、未熟で、自信もない。でも、ひたむきさを持って取り組んでいることを認めてほしいと願っています。
(7ページより)


著者の西尾久美子さんはそう述べた上で、それらを見守る先輩たちの存在と助言がいかに大切かということについて触れ、「導くこと」の大切さに言及しています。「JK」と呼ばれる現代の若者を、大人をも魅了する一人前のプロに育てる京都花街。そこには私たちが知らないたくさんの“言葉”が息づいています。

「教せてもらう用意」(22ページ)
「おおきに」「すんまへん」「おたのもうします」(58-64ページ)
「お気張りやす」(148-149ページ)


こういった言葉に込められた意味を知ることで、「人を育てる」ということだけではなく、一人の女性として、人間として、「育つ」必要性やその方法も学ぶことができるはずです。

「一生、一人前になれへんのどす」
(146ページ)


謙虚に、慎ましやかに、周りに感謝して、毎日を生きる。この本を読めば、彼女たちの美しさの理由も、きっと分かります。
(ライター/中西須瑞化)

■『舞妓の言葉――京都花街、人育ての極意』
著者:西尾久美子
出版社:東洋経済新報社