世界エンタメ経済学 (42) ”ケネディ王朝のお姫様”が次期駐日大使の最有力候補に

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以前、「『VOGUE』編集長のアナ・ウィンターが次の駐英大使に任命されるかもしれない」という話を書いた。また、毎年暮れに開かれる「Kennedy Center Honors」という芸術分野の催しの動画を紹介したこともあった。

今回はそうした話の流れで、次期駐日大使への就任が有力視されるキャロライン・ケネディという御婦人の話を書いてみたい。下のビデオで冒頭に登場し、レッド・ツェッペリンやダスティン・ホフマンといった表彰者のプロフィールを紹介しているのがキャロライン・ケネディだ。





「アナ・ウィンターの大使就任」の可能性はほぼ消えたようだが、われわれ日本人にとってはそれより何倍も大きなインパクトがありそうな可能性が浮上している。故ジョン.F.ケネディ大統領とジャクリーン夫人(ジャッキー)との間に生まれた長女キャロライン・ケネディを、オバマ政権が次の駐日大使に任命するのではないか、という話である。





周知の通り、英国王室は年中パパラッチに追いかけ回され、タブロイド新聞のネタにされるような、良くも悪くも「究極のセレブ」的な存在。だが、米国にはそうしたロイヤル・ファミリーがいない。その代わりに何があるかといえば、「血統書付き」のような一握りの一族だ。そのせいで未だにロックフェラーの名前を騙る詐欺師がいると聞いたこともある。

米国の有名な家系のなかで最も知名度が高いのが、1960年代に大統領(長男J.F.、愛称はジャック)や大統領候補(次男ロバート、愛称はボビー)を輩出したケネディ家だろう。

実際に「ケネディ王朝(Kennedy Dynasty)」なる言葉もあるほどで、カリフォルニア州知事も務めた俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーもケネディ一族の末席に連なる人物。また、ワシントンDCのケネディ・センター、ハーバード大学ケネディスクール(公共政策大学院)、そしてニューヨークのJ.F.ケネディ国際空港なども、ケネディ元大統領やその一族と何らかの縁があるものだ。

足かけ50年近くも上院議員を務めた三男のエドワード(テッド)が2009年に亡くなって以降、ケネディ家とワシントンとの距離は少し開いていたような印象もあるが、家系図を見ると、残された者たちがニューイングランドを中心に地域レベルで政治に関わり続けていることがわかる。

キャロライン・ケネディの駐日大使就任という話は、この3月に一部で出始めていたようだが、4月に入ってからNew York TimesやBloombergもこの話題を報じたため、いよいよ本決まりになりそう、といったところだろう。

これまで公職経験のないキャロライン・ケネディの名前が駐日大使候補として浮上したのは、彼女が2008年の選挙の時からオバマ大統領を支持してきたから。つまり、ある種の論功行賞という見方もできる。また、昔から駐日大使はかなりの大物政治家が任命されてきた「名誉職」で、これまでにもウォルター・モンデール前副大統領やハワード・ベーカー元大統領補佐官、マイケル・マンスフィールド元上院院内総務などが担っていた。日本側も政治的なステータスや大統領と強いつながりを持つ人物が大使に任命されるのを有り難がるところがある——そんな識者の見方がBloombergで紹介されている。

このビデオは2012年9月の民主党全国大会の様子。キャロラインがオバマ大統領候補を推薦するスピーチを行っている。





なお、Bloombergの記事には「米国の歴代政権では、大使ポストの約3割が論功行賞に割り振られていた」「オバマ政権の一期目は、外交経験のない人物(選挙資金集めの貢献者など)が59人も任命され、過去の平均より多かった」「紛争などを抱える『危険で困難な』ポストが職業外交官に割り振られる一方、日・英・仏・伊・加といった米国と緊密な関係にある各国の大使には、大統領との個人的なつながりを持つ人物が任命されることになっている」などとも書かれている。