「中国のハワイ」と言われる海南島のビーチ。12月でも気温30度。もちろん海水浴もできる (Photo:©Alt Invest Com)

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 前回は安徽省の省都・合肥の不動産“超”バブルの話を書いたが、今回は海南島の三亜(san ya)を紹介したい。

 海南島は中国最南端の島で、西はトンキン湾を隔ててベトナムと接し、南シナ海を東へと進めばフィリピン・ルソン島に至る。両国は南沙諸島や西沙諸島の領有権で中国と激しく対立しており、海南省は南シナ海の領土問題の最前線だが、それと同時にここは「中国のハワイ」ともいわれる一大リゾートだ。

 海南省の省都は海口(hai kou)だが、リゾートは島の南に位置する三亜に集中し、とりわけ2000年以降、巨大ホテルやコンドミニアム(リゾートマンション)の大規模な開発が行なわれるようになった。80年代バブル最盛期に日本各地で起きたリゾートブームを何倍にも膨らませたような光景を、いまこの島で見ることができる。

 もちろん、この“バブル”にはちゃんとした理由がある。

 ひとつは、島国である日本とはちがって中国は古来「陸の帝国」だったこと。15億人の人口の大半は内陸部で暮らしており、生まれてからいちども海を見たことのないひとも多い。そんな彼らにとって、「海を見に行く」というだけでも人生の一大イベントなのだ。

 二つ目は、東シナ海や南シナ海に面した中国沿岸部にほとんどビーチがないこと。メインランドはもちろん、香港やマカオにも観光化された大規模なビーチはない。三亜は、真冬でも海水浴を楽しめる中国でほぼ唯一のビーチリゾートなのだ。

 三つ目は、外国人の富裕層にも人気があること。三亜のビーチを歩くと日光浴をしている白人をよく目にする。彼らはほとんどがロシア人で、ウラジオストクなどロシア極東部からやってきている。

 ロシアの冬は暗く長く、富裕層は太陽を求めて南へと向かう。ロシアの避寒地は黒海沿岸が有名だが、いまはさらに南の地中海の島キプロスが大人気だ。キプロスはギリシア系とトルコ系で南北に分断され、かつては国境を挟んで激しい砲撃が交わされたが、現在は地中海リゾートとして人気を集め、ギリシア側(南キプロス)はタックスヘイヴンとしても知られている。

 だがモスクワやサンクトペテルブルグからならともかく、シベリアの東の果てから地中海はあまりにも遠い。カニやサケなどの取引や中古車販売などで儲けたシベリアの富裕層は、手軽な避寒地として三亜にやってくるのだ。

 このような諸条件を考えれば、三亜にリゾート開発が集中する理由もわかる。中国の経済成長と15億人の人口を考えれば、国内にハワイに匹敵するリゾートができたとしてもおかしくはない。

 三亜は、すくなくともビーチリゾートに関しては、中国ではライバルのいない「オンリーワン」なのだ。

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