石原慎太郎東京都知事が旗揚げする新党と、橋下徹大阪市長の「日本維新の会」が連携する可能性が高まっている。近く、橋下市長は石原都知事と連携を視野に入れた協議をする予定だという。

橋下・維新はみんなの党とも政策協議を進めており、いよいよ「第3極」の大連合が実現する……かと思いきや、実際には橋下・維新の会内部で、迷走めいた動きが強まっている。所属する9人の国会議員団の不満が、日増しに大きくなっているのだ。

「橋下市長も国会議員も否定しますが、国会での活動方針をめぐって双方の間に主導権争いがくすぶっています。国会議員団にすれば、国政経験のない橋下市長や松井府知事にあれこれと指図されたくない。国会のことは国会議員団に任せてほしいという思いが強い。自民党を脱党して維新入りした松浪健太衆院議員が、自己のブログに『橋下独裁にはしない』と書いたのはそのワンシーンにすぎません」(全国紙政治部記者)

しかもここにきて、さらに両者のわだかまりを大きくさせかねない事態が起こっている。政治部記者が続ける。

「10月16日に橋下市長が突然、みんなの党から維新に合流した3人の参院議員の議席を返上すると表明したのです。この表明にあたり、橋下市長が3人の参院議員に相談した形跡はありません。議席を返上すれば、3人は“ただの人”になってしまう。3人は公式に議員辞職の意向を示していないだけに、深刻なトラブルになるかもしれません」

そこには次のような背景がある。政党が単独で法案を提出するには、参議院では発議者1名、賛同者10名の計11人以上の議員が必要となる。みんなの党の参院議員数は11人いたので、ぎりぎり単独で参院に法案を提出することが可能だった。

「ところが、3人が維新に合流したため法案提出ができなくなってしまった。これはみんなの党にとって痛手です。ただ、3人はいずれも比例当選組だったんです。そこで渡辺代表は『維新に行くなら、議員を辞職してから行くべき』と、3人の会派離脱をがんとして認めなかったのです。辞職ならば、比例名簿から次点候補が繰り上げ当選となり、みんなの党の参院議席数は11のまま維持できますから」(政治部記者)

一方の維新側は「3人の参院議員には自由な政治活動も保障されている」として、みんなの党に速やかな会派離脱を求め、渡辺代表と反目していた。

「なのに再連携に向けた話し合いをするなかで、橋下市長は交渉をスムーズに進めようと考えたのか、突然、3人の議席を返上すると口にしてしまったのです。いくら衆院選にくら替え出馬すれば自動的に失職になるとしても、3人に事前説明もないまま切り出すなんてさすがに強引すぎます。議員の地位に関わるデリケートな問題だけに、3人の参院議員の心中は穏やかではないでしょう」(政治部記者)

これまで強引とも思える橋下市長の言動は、リーダーシップと自信の表れと理解されてきた。しかし、3人の議席返上問題で発揮した今回の強引さは、自信のなさ、焦りの裏返しのように見えてしまう。

橋下市長と国会議員団の間に生じたすきま風。今後、この風の勢いがどんどん強まっていかなければいいのだが……。