天の羽衣を漁師に見つけられてしまった天女は、返してもらう代わりに美しい舞を披露する(資料写真)

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ホテルオークラ東京は2012年5月20日、開業50周年を記念した薪能を開催した。薪能は野外で催されることが多く、「ホテル」を会場とした薪能は初の試みという。

宴会場に建てられた能舞台で、能楽師の観世清和さんが約570人の観衆を前に能「羽衣 和合之舞」を舞った。

世阿弥自筆の「秘すれば花」

「羽衣」は各地に伝わる「天の羽衣」伝説を題材にした能で、人気曲として400年以上にわたってたびたび演じられている。解説を務めた能楽研究者の増田正造さんによれば、「最近金環日食が話題だが、この能も昔から変わらない人々の空への憧れを結晶させた、能の中でも最も能らしい能のひとつ」という。

シテ(主演)を務めた観世清和さんは観阿弥・世阿弥以来続く観世流二十六世に当たる。この日もかがり火に照らされながら、神秘的な「天女」の姿を表現した。

今回の薪能と連動し、ホテルオークラ東京に隣接する大倉集古館では6月3日まで特別展として「観世宗家の至宝」を開催している。観阿弥・世阿弥以来続く観世家伝来の能面、装束のほか、「秘すれば花」などの名言を含む『花伝』の世阿弥直筆本などが展示されている。入場料は一般1000円、大学・高校生・65歳以上800円。中学生以下は無料。