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アール・デコ調の美しいボトルデザイン、繊細で気品のある味わい、デリケートに立ち上る金糸のような泡―。ペリエ ジュエは、華やかなシャンパーニュのイメージを象徴するブランドだ。1811年の創設から昨年で200周年を迎え、新たな世紀を歩み始めたこの老舗メゾンから、先日、最高醸造責任者エルヴェ・デシャン氏が来日した。ペリエ ジュエを最も良く知る人物のひとりであるデシャン氏とともにご自慢の3本を飲み比べながら、メゾンの歴史、そして今、未来について聞いた。

”シャンパーニュの華”と称される
『ペリエ ジュエ プレステージ・キュベ「ベル エポック」』の誕生


「ペリエ ジュエ社の歴史は、ふたつの家族の物語から始まります」と、200年にわたる歴史について語りはじめたデシャン氏。「ピエール・ニコラ・ペリエとローズ・アデライド・ジュエが結婚をし、1811年に創設されました。家族は、畑を自分たちで取得することにより、質の高いブドウを管理することができると早いうちから理解していました。1800年代の後半には、英国に最も多く輸出。当時、シャンパーニュとは門出のリキュールといわれるものに200gぐらいの糖分を入れた甘いお酒でしたが、英国市場の要請により、食前酒として糖分を20g程度に抑えたものを作りました。それが辛口シャンパンの始まりとなったのです。」
現代にまで続くシャンパーニュのスタイルを決定づけてきたこのメゾンの歴史が、“シャンパーニュの歴史そのもの”とも言われるのは当然だろう。今ではすっかり主流となった辛口シャンパンだけでなく、ヴィンテージ・シャンパンを生み出したのもペリエ ジュエ社だ。先見性を持ち、こういった歴史的変革を行ってきたことで知られるのが2代目のシャルル・ペリエならば、メゾンにとって運命的かつ華やかな革新を行ったのが創設者の甥で3代目アンリ・ガリスだ。
「1902年に、彼が友人でアール・ヌーヴォーを代表する芸術家エミール・ガレにボトルのデザインを依頼し、日本のアネモネを使ったデコレーションが施されたのです。その後60年間もの間その瓶は棚の中にしまわれ、忘れられていました。それを私の先任者である最高醸造責任者が見つけ出し、1960年代に、最高のキュベをこの瓶に詰めることに決めたのです。」こうして生まれたのが、ガリスとガレが生きた時代の名を持つプレステージ・キュベ「ペリエ ジュエ ベル エポック」。繊細でエレガントな味わい、芸術性溢れるボトルデザインは、瞬く間に、メゾンの顔となった。

7人のセラーマスターが伝え継ぐ、メゾンの伝統とクラフトマンシップ

これほどまでに華やかな歴史をもつメゾンだが、創設以来、醸造の責任者であるセラーマスターとなった人物はわずか7人だという。
「200年で7人というと決して多くはありませんね」とデシャン氏は笑う。それは、独自のスタイルを貫き続け、メゾンの伝統とクラフトマンシップを確実に受け継いでいくための秘訣でもあるのだろう。歴史と伝統の担い手として、ペリエ ジュエに欠かせない存在であるデシャン氏だが、シャンパーニュと関わりは幼少時にまでさかのぼる。

「とても良く覚えているのですが、1964年の年末、祖父母が、かつてシャンパーニュに土地を持っていて畑で採れたシャルドネを食べさせてくれたのが最初の出会いでした。その後、シャブリで白ワインを造る、瓶詰の会社に勤めるという選択肢もありましたが、クリエーションのある世界に入りたいという思いだけでなく、シャンパーニュ地方に戻りたいとも思っていたので、ペリエ ジュエに入社しこの道を選びました。自然によってもたらされたものをそのまま受け入れ、耐えるのではなく、自然が与えてくれる恵みを活用し、何かを創造していくという世界にとても惹かれました」
ペリエ ジュエ社の自社畑は65ヘクタールにも及び、何とその99.2%がクリュの格付けを受けている。伝統あるシャンパーニュ地方においても“魔法のトライアングル”と呼ばれる輝かしいエリアの中心に位置し、AOCシャンパーニュの中でも最高級の銘柄を生み出す。だが、そんな恵まれた地域においても、時に自然は恵みだけでなく人々に試練を課してきた。そして、土地の人々は、そのたびに英知で乗り切ってきたのだ。

自然の恵みを活かし、人の手でクリエーションする、シャンパーニュという芸術

「オートクチュールのデザイナーと違い、私は全く新しいものを作り上げているわけではありません。毎年全く違う素材を使いながら、最終的に同じ結果を生み出すという逆発想のクリエーションをしています。ボルドーやブルゴーニュのように毎年ヴィンテージができる地域とは違い、シャンパーニュは本当に良い年にしかヴィンテージを作りません。ヴィンテージを出すか、出さないかはそれぞれのメゾンに委ねられているのです。
例えば2003年は、我がメゾンにとっては良い年ではありませんでしたが、他のメゾンではスタイルの違い、畑の違いにより、2003年ヴィンテージを出したところもあります。他の地方のワインづくりとの違いは、ヴィンテージというものが、それぞれのメゾンのあり方と非常に結びついているということですね」

「味や香りを表現するのは難しい作業です。感覚的なことですから、これで正しいのかという確証はないわけです。でも、実際には私たちは小さいときから、鼻や口で覚えているいろいろな香りの記憶があります。フランスでは、食事の際にプライベートではこういった細かい感想を表現することはありませんので、美味しい、もう少し欲しい程度しか言いません。でも、仕事の際は、様々な香りを分類して表現まで持っていくという作業を頭の中でやっていかなくてはなりません。」それほどまでにデリケートで難しい作業を核として作られるシャンパーニュは、決してルーティンワークからは生まれない。自然が生み出す偶然性と、人間の英知とが生み出す、美しいコラボレーション、まさに飲む芸術なのだ。

>ペリエ ジュエ セラーマスター エルヴェ・デシャン氏スペシャルインタビュー Vol.2

ペリエ ジュエ

1811年にシャンパーニュ地方エペルネ市に創業された、200年の歴史があるシャンパーニュメゾン。辛口シャンパーニュの先駆けとしても知られ、アール・ヌーボーの巨匠エミール・ガレが描いた、優美なアネモネのボトルが象徴的な「ベル エポック」が代表的。19世紀には英国王室、そしてフランス王室御用達でもあり、ハリウッド女優からモナコ王妃になったグレース・ケリーをはじめ、多くのセレブリティに愛されている。全てのアイテムに最良のシャルドネ種が使用されており、繊細でエレガントな味わいが特徴。

ペリエ ジュエ プレミアム・クラブ