この前、北京故宮博物院が展示のため借りていた文物をある農民によってたやすく窃盗された。その農民は文物の価値を知らず、ゴミ箱にポイ捨てしてしまったため、いまだに取り戻すことができておらず、波紋を呼んでいる。

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 この前、北京故宮博物院が展示のため借りていた文物をある農民によってたやすく窃盗された。その農民は文物の価値を知らず、ゴミ箱にポイ捨てしてしまったため、いまだに取り戻すことができておらず、波紋を呼んでいる。

 その波紋が収まらないうち、CCTV(中国中央電視台、中央テレビ)のある著名な番組ディレクターがそのミニブログで暴露するところによると、故宮博物院内の建福宮が億万長者たちの個人的会所に変身しているという。さらに他のネチズンの暴露によると、4月23日、建福宮内の一会所で開幕式が行われ、著名人が大勢集まって、その多くが長江商学院CEOクラスの卒業生だそうだ。

 開幕式の後、すべての参加者の手元に紫禁城建福宮のマークの入った「入会協議書」が届けられたという。「会所の入会費は100万元で、500人が加入したとして、5億元という計算になる。その5億元で五つの建福宮が立てられる」という。国から文物地指定を受けている所が金持ちのレストランになるなど、故宮博物院側としてはどう説明するか、注目を集めている。

 建福宮ガーデンは1924年、火災によって消失したが、それに関してはインターネットで調べることができる。常識として知られていることだが、消失した歴史的文物を再建することは文物保護のタブーとされている。それゆえ、2000年に国務院がその再建計画を許可した時でも賛否両論で割れた。しかし、再建費用は香港側が出すということもあって、再建しないと損という考えもあり、その計画が実施されてしまったわけだ。これはこれまでに故宮の中で唯一許可を得た再建プロジェクトだった。

 故宮博物院側の公式の回答によると、2005年に再建工事が完了した建福宮ガーデンはその外観にしろ工程にしろ忠実に元の建築を再現し、内装工事も現代の使用基準や防災基準を満たしている。再建された建福宮ガーデンは完全に故宮博物院によって管理され、国内外からの貴賓の見学や文化サロン、講座などの学術交流イベント、記者会見などに使われてきたという。

 再建された後の建福宮では、ブッシュ元米大統領夫妻や、ルーヴル美術館館長、大英博物館館長、大都会博物館館長などを接待している。台湾海峡両岸の故宮博物院の歴史的な正式初会談もここで行われた。また、ここでは外交部、文化部による重要な国賓接待が行われたこともある。さらに、毎年定例の「両会」期間中に、一部の代表や委員の方も視察にやってくる。はっきり言ってここは既に接待用の「招待所」のようなところになっている。偽の皇帝が真の皇帝たちの間に混じり込んで寝るのは必然的に奇異なことになるが、その価値志向も一般の人とはかけ離れているだろう。

 故宮は公共文化機関として、米国大統領が来たとしても清掃工が来たとして平等に接待しなければならない。もちろんそう思わない人もいるが。そこで、故宮に「特殊」価値を見い出すことが人々の関心事になるわけだ。

 「招待所」というのは中国の計画経済時代の産物だが、今は市場経済の影響を受け、転売されたり下請けに出されたりしている所も多い。手に持っていれば邪魔物になるが、下請けなどに出すと収入が入ってくる。建福宮もおそらくそのような状況だろう。それで、「招商引資(外資誘致)」をし、億万長者たちの個人的会所となっただろうが、その考え自体には問題はないと思う。聞くところによると、既に2007年時点で「龍夢の旅」というパーティをそこで開いた人がいて、ゴージャスを極めたという。

 しかし、ここで考えなければならない問題は二つある。一つはこのようにしてよいのかどうか。建福宮が個人的会所となり、企業がそこで宴会をやることなどは「文物保護管理条例」に甚だ抵触するとみる専門家がいる。博物館は公共教育機関として大衆にサービスを提供すべきもので、決して一部の個人に限ってサービスを提供してはならない。もし本当だとすると、これは全世界の博物館業の職業道徳に背くもので、槍玉に挙げられるべきことになる。

 もう一つはそうする必要があるかどうか。故宮が金に困っていると言っても誰も信じない。金を稼いだらもっと多くの文物を購入し、文物を保護するというのも真っ赤な嘘。安全面のことは別としても、故宮の文化的価値に対する影響から見てもその是非は自明のことだ。

 文物保護部門がある程度の商業開発を行うことに関しては、現行の法律では完全には禁止されていない。事実、これが多くの文物保護部門が商業化されている主な原因でもある。欧米を含む地域の一部の博物館や台北の故宮博物院などもみな自らの文化商品を開発している。ただ、「法律に禁止無し」は無制限の商業開発を許すものではなく、商業化の波に浸食されその公共性を失ってはならない。

 長期にわたり、故宮は「開発」の価値を強調してきた。経費問題が解決できるだけではなく、観光客や大衆のニーズにも応えられると考えられてきた。故宮博物院の鄭欣〓院長によると、1年間で販売される商品の品目は食品を除いても5000種にも上るという。どれだけ大きな利益源になっているかが分かる。(〓は上が水、下が水水)

 公式に正確な情報が発表されるまで、故宮の「商業開発」は「闇の成金」の範例に過ぎないのかもしれない。故宮は莫大な公共財政投資を受けている上に、年に数億元にも上る入場券販売収入がある。それなのに、全国民、全人類に属する唯一無二の文化財を利用して営利を行う。また、これら商業開発の具体的な情報が政府監督部門や社会大衆に公開されておらず、必要な外部からの監督が欠けている、というのが実態だ。(編集担当:祝斌)



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