新しい相棒を得て浅尾美和が「ここが私たちのスタートライン」と位置づけた平塚大会。4位に沈み、順当になら取れると思われたツアーシード権も手からこぼれ落ちた  (撮影:小崎仁久)
 ビーチバレーJBVサテライト平塚大会は24日、湘南ひらつかビーチパーク(神奈川県平塚市)にて最終日が行われた。

 昨日の豪雨から一転、晴天に恵まれたが、海からの強風の中、男女とも準々決勝以降の戦いが繰り広げられた。女子決勝では、山田寿子・幅口絵里香組が、金田洋世・村上めぐみ組を2-1で下した。男子は長谷川翔・畑辺純希組が優勝した。

 また、今大会は、東日本大震災の影響により行われなかった国内トップツアー、JBVツアーの予選会を兼ねており、男女上位2チームには今シーズンのシード権が与えられた。

 ニューペアで初の公式戦に臨んだ浅尾美和(エスワン)・松山紘子(SAND BLOCK)組は準決勝で敗れ、つづく3位決定戦においても勝つことができず、4位となりシード権も逃した。

2011 JBVツアーのシード権を獲得したチームは次の通り。

■女子
山田寿子(FOVA/大樹測量設計)・幅口絵里香(大樹測量設計)
金田洋世・村上めぐみ(ともに三井企画(株)上越マリンブリーズ)

■男子
長谷川翔・畑辺純希(ともにフリー)
牛尾正和(フリー)・畑信也(ペボニア ボタニカ)

■シード権獲得に涙もみせた女子優勝の山田・幅口組
優勝しちゃいました(笑)。昨年シード権を取れず、くやしい思いをして1年間、何が足りないのか考えてやってきた。緊張していたが、シード権がかかった準決勝は集中してプレイできた。今年は勝負の年、JBVツアーで表彰台に上りたい。

■女子準優勝の金田・村上組
出来はまあまあだった。練習してきたことが出せたと思う。目標だった予選会をクリアして、ようやくスタートラインに立てたことはうれしい。JBVツアーは楽しみ。チームカラーの、拾って繋ぐ粘り強さが出せたらいい。

■4位浅尾美和(エスワン)・松山紘子(SAND BLOCK)組
 これからの予定を聞かれ、言葉につまった。「負けることは考えていなかったので…」

準決勝、3位決定戦にも敗れた後のインタビュー。それまでカメラに笑顔も見せ、記者の問いにも軽やかに答えていたが、浅尾の頭には、上手い常套句も質問をかわす言葉も浮かばなかった。

 シード権を逃した浅尾組だが、ワイルドカード(主催者推薦)によるJBVツアー(全7戦)への参加は可能である。しかしワイルドカードの使用は1チーム4回のみ。つまり、最大でも4戦にしか参加できない。「この大会をスタートに。ワールドツアーの参加も考えていた」と話すが、国内シード権のない状況では計画を見直さざるを得ないだろう。また、その先にある12年ロンドン五輪への道は、ワールドツアーのポイントを獲得できない、日本代表に選ばれないとなると、大きな暗い雲が立ち込めている。

 コンディションは悪くはなかった。スピードもあり、何度もダイビングレシーブでボールを拾っていた。タイムアウトでは、ツアー経験の浅い相棒の松山にアドバイスを与え、チームを引っ張っていた。松山のジャンプサーブと合わせ、チームのストロングポイントである浅尾の強打も見せていたが、それが続かなかった。風の中での戦術の単調さも感じられ、相手のミスにつけ込むこともできなかった。

 記者会見では努めて明るく振る舞い、いつ何時でも狙っているカメラ群を感じているのか、沈んだ顔を見せない浅尾。しかし、すべてのプログラムが終わり、まわりが撤収作業で慌ただしい中、ふと、ひとり立ち止まり、足元の砂をじっと見つめていた。

 昨年のツアー。不甲斐ない成績、結果チーム解散に至った自らを巡る喧騒に、時折、疲れた表情を浮べていた。シーズンもペアも変わったが、スタートでの躓きに、同じ感情がよぎったのであろうか。だが、チームが発足し、まだ2ヶ月あまり。「いいスタートは切れなかったが、後は上がるだけ」と話す彼女自身の言葉を信じたい。


(取材・文=小崎仁久)