バルセロナからニューヨーク・レッドブルズに移籍した“元”フランス代表FW、ティエリ・アンリ(32)が22日、本拠地ニュージャージー州のレッドブル・アリーナで米国デビューを果した。対戦相手は米ツアー中のトッテナム。アーセナル時代に“ノース・ロンドン・ダービー”で幾度も対戦したライバルを相手に、前半25分にゴールをマークしデビュー戦を飾った。

 入団発表からの1週間、地元メディアのインタビューを相次いで受けたアンリだったが、サッカーがマイナースポーツである米国の現状を肌で感じる機会となったろう。中でもフォックス5局の朝の番組「グッデイ・ニューヨーク」でのインタビューでは、いきなり「W杯で優勝したばかりですね」とトンチンカンな応対を受けた。

 司会者のジョークだったのかも知れないが、スタジオの観客はシーン。しかしアンリは淡々と「いや、優勝したことはあるけど、今回じゃなかった」と答えた。司会者が、米国民は“ビッグスコア”のゲームが好き、と前置きしたうえで、「いちばん点が入った試合のスコアは?」と質問したのも、サッカーをからかう意図があったのかも知れない。これにも「6―0だったかな。でもサッカーで重要なのは、ゲームの美しさなんだ」と生真面目に答え、米国におけるサッカーの“親善大使”としての役割を自任する意識を感じさせた。

 さらには「欧州での人種差別がイヤで米国に逃げてきたんでしょう?」という意地悪な質問も。しかしここでも「欧州で16年間プレーしてきて、そういうことはあったが、米国に来たのはこの街が好きだから」と穏やかに答えた。インタビューの背景に、アンリがアイルランド戦(W杯予選プレーオフ)でハンドによるアシストをあげた場面が繰り返し流れるなど、悪意ともとれる演出もあった。

 しかし22日の試合では、「僕がボールをもつたびに大歓声が上がった。ここが自分のホームと感じられることは重要なんだ」とサポーターの声援を受けてプレーする喜びを取り戻したようすのアンリ。サッカーに疎い米国の一般市民はともかく、地元の2万人の観客にはしっかりと存在感をアピールできたようだ。