W杯でドメネク監督を罵倒して“追放処分”を受けたフランス代表のニコラ・アネルカ(チェルシー)が、15日付フランス・ソワール紙のインタビューで沈黙を破ったが、“事件”についての説明はごくわずかで、自己批判に至っては一切なかった。そればかりか、自分に批判的なコメントをした解説者のビシェンテ・リザラズ氏(98年にフランスがW杯を制覇したときの左サイドバック)に矛先を向ける発言に終始した。

 これを受けてリザラズ氏が17日付のル・フィガロ紙上で反論している。「私のいまの仕事は、スポーツをわかりやすく解説することであって、情けなくなるような子供のケンカに立ち入ることじゃない。アネルカはドメネクへの暴言について何か説明したか? まったくなしだ。彼は3度W杯を逃したあとで、ようやく最初の出場を果した。我々はそんな彼にもっと熱意を期待していたんだ」とアネルカに対する失望を説明したうえ、「彼がボールを追えなくなったとき、どんな仕事に就くのか見てみたいものだ」と語り、自分の引退後の仕事ぶりにまでケチをつけられたことを決して許そうとしない口ぶりだ。

 なお、現役選手と98年W杯優勝メンバーの対立はこれが初めてではない。前回2006年のドイツ大会でも、調子の上がらなかった序盤に、引退して解説者に転じたOB(とくにマルセル・デサイー氏)から批判を浴び、ウィリー・サニョルが「黙れ」と食ってかかったことがある。

 監督の戦術にフィットせずにピッチで結果を出せなかったアネルカが“暴発”してしまったのは、度重なる批判で追いつめられたのも一因であるとするなら、“98年の栄光”がその後の世代に目に見えぬプレッシャーを与えていたことも考えに入れる必要がある。フランスのメディアは98年のチームを理想像として、その比較対照で現在のチームを批判しつづけてきた。リザラズに対するアネルカの“八つ当たり”は、こうした感情を反映していると言えなくもない。