フランス代表歴代最多の51得点という記録を保持するティエリ・アンリ(32)が15日、代表引退を発表した。レキップ紙がウェブ版で報じた。

 バルセロナを退団し、アメリカを新天地に選んだアンリは、ニューヨーク・レッドブルズ入団の記者会見で「W杯の前から(代表引退を)決めていた。南アフリカ(での結果)がこの決定に作用したわけではない。大会前に発表することもできたが、チームに影響をおよぼしたくなかった。いまそのときが来た」と語った。

 1997年10月11日の南アフリカ戦で代表デビューしたアンリは、98年W杯、ユーロ2000、2003年コンフェデレーション杯の3つのタイトルを手にした。とくにコンフェデ杯では、決勝(対カメルーン)でゴールデンゴールをマーク、大会4ゴールを記録してMVPと得点王に輝いた。

 フランス代表史上初の4大会連続出場を果した2010年W杯では、スタメンを外れ、一次リーグの2試合に途中出場したのみ。代表123試合目(フランス代表歴代2位)となった最後の試合では、後半10分にピッチに登場、アルー・ディアラから受け取った主将の腕章を巻いて、デビュー戦と同じ相手との対戦でキャリアを締めくくった。また、この試合でフランス代表でのW杯出場が17試合目となり、ファビアン・バルテズ(GK)のもつ記録に並んだ。

 フル代表入りするずっと以前の15歳から各年代の代表チームでプレーしてきたアンリ。ユース時代から通算すると、ブルーのユニフォームで出場したのは実に185試合、得点は87ゴールを数える。もちろん前人未到で、これからも破るのは至難となろう偉大な記録だ。

 それゆえにフランス代表への愛情はことさら強かったはずだが、W杯予選プレーオフ(対アイルランド)でのハンド、今回W杯でのチーム内紛とスキャンダルに見舞われた代表キャリアの終幕は、それまでの輝かしい記録の数々とはあまりに対照的だった。

 なお、アンリとともに98年優勝メンバーだったパトリック・ヴィエラもつい先日、代表から退く意向を明らかにしている。これでW杯優勝を経験した選手がすべてフランス代表から去ったことになる。そして98年メンバーから初めて、ローラン・ブランが監督に就任した。一時代の終わりを確実に告げる象徴的な出来事といえる。