控え室で監督を罵倒したアネルカの追放、その処分に抗議した選手たちの練習ボイコット――今回のW杯で演じたフランス代表の失態には、選手たちの“エゴ”が大きく関係したと指摘される。

 大会のずっと以前から、フランス代表のイメージは悪化の一途をたどっていた。その原因には、成績の不振や監督の不人気はもちろんだが、ファンや報道陣との接触を徹底的に排除した姿勢もあった。

 その表われのひとつとして不評だったのが、移動の際に選手のほとんどが着用するヘッドホン。選手の側に立てば、“雑音”をシャットアウトして試合に臨みたいのも理解できるが、ファンにはそんな姿が“スター気取り”として映ったとしても無理はない。

 こうしたファンの失望を背景に、メディアが選手たちの“あら探し”に躍起になり、選手たちは精神的に追い込まれ、ますます殻を閉ざす、といった悪循環が生まれたという見方もできる。

 この悪循環を断とういう動きが、今回の代表の失墜を他人事ではないと重く受け止めたフランスのクラブにも見えはじめた。マルセイユのダシエ会長が、選手たちに“ヘッドホン禁止令”を出したのだ。5日付のレキップ紙が報じた。

 ダシエ会長は、「選手たちには、バスから降りて控え室に向かう間、ファンの前でヘッドホンを着用しないよう求めた。サッカーは“象牙の塔”から出る必要がある。応援してくれるファンにもっと開いた態度で接する努力をすべきだ。それには、まずヘッドホンがその象徴であると考えた」と語った。

 “ヘッドホン禁止令”の先陣を切ったのは、ブレストのギヨ会長だが、フランスのトップクラブであるマルセイユがこれに追随したことで反響が大きくなった。ただし、他のクラブの反応は「選手たちも馬鹿じゃない。ファンに接する必要性を理解できるだろう」(ランスのマルテル会長)、「禁止すれば反発も大きくなる」(ヴァレンシエンヌのドクリエール会長)、「選手たちにとっては集中力を維持する方法だ」(ロリアンのフェリ会長)など賛否両論あり、論議を呼びそうだ。