W杯7日目のグループA第2節で、フランスがメキシコを相手にいいところなく0―2で敗れた。

 あまりにあっけない敗戦に、各放送局にゲストコメンテーターとして招かれたフランス代表OB(98年の優勝メンバー)も呆然としたようす。ファビアン・バルテズ氏(TF1局)は、「大きな落胆を味わっている。メキシコはすべての局面でフランスにまさった。ディフェンスでも、勝つ意欲でも上だった」と感想を述べた。

 選手に意欲が感じられなかったという点で、パトリック・ヴィエラ(カナル・プリュス局)も同意見だ。「この失敗をどう説明できるかわからない。不可解だが、今夜は選手たちに意欲が欠けていたような印象を受けた。たぶん何をすべきかわからなくなってしまったのではないか」と腑に落ちない表情だ。

 選手たちに迷いがあったとすれば、直前の強化試合、初戦(ウルグアイ戦)、この試合と、フォーメーションやメンバーを二転三転させたことが大きく影響したはずだ。そしてその手直しも、多くの専門家の意見と必ずしも一致するものではなかった。

 ロベール・ピレス(TF1局)は、「フランス代表は監督のあり方がそのまま反映されたチームだった。監督がよくなければ、選手もよくない。選手たちみんなが友達というわけにはいかないが、ピッチではまとまらなければいけない」と、これまで通りドメネク監督への不信感を表し、それが選手たちの結束不足につながったと分析した。

 選手たちの“エゴの衝突”については、これまで何度もマスコミが報じてきた。そのたびに主将のエヴラをはじめ「グループに何も問題はない」と否定してきたが、ビシェンテ・リザラズ氏(TF1局)はこれを「問題を隠すためのオーバーリアクション」と見て、選手間に意思の統一がなかったと推測している。

 そのひとつの現れとして、グルキュフをベンチに下げるよう“先輩格”の選手たちが監督に働きかけたとの報道(レキップ紙)もあった。その真偽は定かでないが、実際にグルキュフは出場せず、チームの戦い方に大きな変化が生じたのはたしかだ。

 クリストフ・デュガリ氏(カナル・プリュス局)は、「初戦ではマルダを、この試合ではグルキュフを犠牲にした。その一方で、調子のよくないアネルカとゴヴにこだわった。何もかもちぐはぐで理解不能。戦術も何もなかった」とドメネク監督に不満をぶつけている。

 リザラズ氏もアネルカの起用に反対だったひとり。しかしこの日はとくに、本人のプレー自体に納得できなかったようだ。「まだ前半、ひとりの選手が歩いているのを見た。ニコラ・アネルカだ。戦う姿勢がなかったし、プレーに無頓着だった。これがこの試合を象徴するイメージ。ドメネクは前半で彼を下げたが、もっと早くそうすべきだった」と手厳しい。

 ただしエマニュエル・プティ氏(レキップTV)は、下がってボールをもらいにいくアネルカのスタイルには好意的で、むしろそれを生かさずに、自分ひとりの力で状況を打開しようとしたリベリの非を指摘する。この試合で初めてトップ下のセンターで起用されたリベリだが、結局はサイドに流れていく傾向があった。しかしプティ氏は、何よりチーム全体として「自分たちの力を過信し、守備に重点を置くという大原則を守らなかった」ことを最大の失敗ととらえている。

 このように、12年前に栄光を味わったフランス代表の元メンバーたちは、ショックとともに、怒りを感じている。あと1試合(南アフリカ戦、22日)残っているものの、フランスの決勝トーナメント進出の可能性を信じる者はほぼ皆無。2試合を終えて1敗1引き分けという結果は、グループリーグで姿を消した2002年W杯、ユーロ2008とまったく同じ展開だ。

 グループAのもうひとつの最終戦は、勝ち点4で並んだウルグアイとメキシコの直接対決。引き分ければ両チームそろって決勝トーナメント進出となる。ただしA組2位の次の相手がアルゼンチンとなる可能性が高いため、必ずしも引き分け狙いの展開になるとは限らない。しかし過去2度の例にあるように、フランスがこの敗戦から立ち直り、大差で南アフリカに勝てるかといえば、かなりむずかしいと言わざるを得ない。