ゴールデンウイークで楽しむ“ミステリー”―【書評】『ミステリー・ドラマ』

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 『ミステリー・ドラマ』というタイトルをそのまま受け取ってしまうと、よくあるミステリーモノか? と思ってしまったが、単純な「ミステリー・ドラマ」で終わらないところがさすがと言うところだろう。

 生放送直前のスタジオから主演俳優・石堂英介が誘拐され、テレビドラマ生放送中にミステリ映画の巨匠と呼ばれる監督・檜市一国が殺害された。
 「このまま演技を続けなければ石堂の命はない」
 殺害された檜市一国の口には、犯人からの脅迫状が差し込まれていた。さらにスタジオという密室で生放送中にも事件は続く。吉野航平、朝井里美らドラマのキャストたちは演技を続けながら犯人を捜すことになるが…。 

 現実とドラマで2つの事件がリアルタイムに進んでいき、最後まで事件がどう転ぶのか分からないスリリングさが魅力である本作『ミステリー・ドラマ』(角川書店)。作者の藤ダリオ氏はもともと映画やテレビアニメの製作者であり、シナリオの組み立ての巧さは流石、と言うべきだろう。

 ただ、登場人物が多く、話の展開が早いだけに、人物の感情などの表現が薄く感じられる部分も。読み手としては、シーンごとに自分の感情で登場人物の感情を補いながら、その世界に入り込むことで、そのスピード感を楽しむことができるだろう。

 もうすぐそこにあるゴールデンウイーク、『ミステリー・ドラマ』の世界に溶け込んでみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部/田中規裕)


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