先日、自宅が盗難にあったことがわかったパリ・サンジェルマン(PSG)の前会長アラン・ケザック氏だが、そのせいで発売間近の著書も話題になった。著書はPSG会長としての2年間を振り返った内容で、ル・パリジャン紙によると、現在フランスでもっとも注目の選手、ヨアン・グルキュフの獲得に失敗したエピソードについても触れている。

 PSGは2006年夏、前シーズンにレンヌで36試合に出場し6得点をマークし一気に注目を集めた19歳のグルキュフ獲得に大きな関心を示す。PSGにとっては、父クリスチャン・グルキュフ氏(当時・現在ともロリアン監督)が当時のラコンブ監督と親しいことが強みだった。しかし名門との獲得争いには勝てず、グルキュフはACミランに入団する。

 その1年後、PSGはACミランで満足な結果を出せなかったグルキュフの獲得にもういちど挑戦する。しかしこのときのネックは、ラコンブ監督に代わって就任したル・グエン監督だった。ル・グエン監督はリヨン、グラスゴー・レンジャーズ、PSGと渡り歩く前に、レンヌで監督デビューを飾り3シーズン指揮をとったが、最後のシーズンは経営陣に半ば追われるように辞任した。その後釜に座ったのが、クリスチャン・グルキュフ氏だった。

 ケザック氏によると、こうした出来事を厳格で誇り高いブルターニュ人は決して忘れないという。ル・グエン氏もグルキュフ氏も同地方出身で、典型的なブルターニュ気質をもつとされる。ケザック氏は、互いに信頼感をもてない相手のもとに息子を預ける気にはなれなかったのだろうと振り返っている。

 ヨアン・グルキュフは次のシーズンもACミランで控えに甘んじたが、今季からはレンタル先のボルドーでチームの柱として大活躍しているのは周知のとおり。グルキュフ獲得失敗は、昨季を通じて降格の危機にあえぎシーズン終了前に辞任したケザック前会長にとって、よほど悔やまれる出来事だったのだろう。