11日のW杯欧州予選ルーマニア戦を終え、フランスに同点ゴールをもたらしたヨアン・グルキュフ(ボルドー)を絶賛する声が鳴り止まない。フランスの1点目となったリベリのゴールをアシストし、引き気味でゴール前を固めるルーマニアを30メートルの強烈なミドルシュートで粉砕した22歳の若者を、フランスの各メディアは“ヌーヴォー(新)ジダン”の称号で持ち上げている。

 かつてボルドーや代表でジダンとともに戦ったビシェンテ・リザラズ氏もそのひとり。13日付のレキップ紙で、「センスや他の選手を生かす能力は、ジネディーヌ・ジダンを思わせる」と称賛している。同氏は、ジダンに匹敵するグルキュフの武器として、ボールをキープする個人の才能に加え、チームプレーに徹する内面的な謙虚さを特筆した。

 リザラズ氏によれば、グルキュフは、味方に絶妙のパスを送るジダンの献身的なプレーと、機を見て突破を図るカカの果敢さの両方を兼ね備える。ルーマニア戦で見せた豪快なミドルシュートは、フランス代表においては、かつてのフランク・ソゼ(1988〜1993年、39試合9ゴール)以来のクオリティと高い評価を与えた。

 リザラズ氏は、グルキュフのチームプレーに徹する内面的な成熟は、ACミランのようなビッグクラブでこそ培われたと見ている。世界の一流選手と日々ポジションを争いながら、冷静さを保ち、重圧に負けず、責任を負い、自分に何が必要なのかをたえず見極める努力を重ねたゆえに、現在のグルキュフがあるというわけだ。

 ジダンがいなくなったあとのフランスは、攻撃のスタイルを新たに見いだすまでに時間を要した。これまでのさまざまな試行錯誤はほとんど実を結ばなかったが、ルーマニア戦(の後半)を見るかぎり、グルキュフとリベリを軸に、アンリを左サイドで使い、トップにベンゼマを置く、という布陣でようやく確かな手応えをつかみつつある。ただしリザラズ氏は、この布陣が“自動性”を獲得するには、さらなる研鑽が必要だと強調している。