リーグ・アンの2008-2009年シーズン開幕(8月9日)までほぼ1ヶ月となり、各チームが合宿を開始している。移籍の動きが活発になりつつあるが、補強でもっとも出遅れているのがパリ・サンジェルマン(PSG)。過去2シーズン続けて降格の危機を味わっただけに、新会長を迎えて予算を増額、代表レベルのスター選手を集める、とぶち上げたものの、いざフタを開けてみると5日の時点で新規獲得選手はゼロというお寒い状況だ。

 たしかに契約目前まで漕ぎ着けながら、メディカルチェックで心臓に異常が見つかったリリアン・テュラム(前バルセロナ)のケースは不運だった。今月末に明らかになる精密検査の結果次第では、フランス代表キャップ142という大ベテランを迎え入れる望みもまだ残っている。昨シーズン2部で得点王(28ゴール)となった24歳、192センチの大型FWギョーム・オアロの加入もある。ただしこれは冬の移籍期間にまとまった契約(元のル・アーブルに半年間レンタル)に過ぎない。

 先月30日に再開された練習では、詰めかけたサポーターによって、経営陣を厳しく批判する横断幕が掲げられた。その練習初日に、主力選手3人が無断欠席するというトラブルもあった。昨冬にサンパウロから獲得したブラジル人MFのソウサ、チーム最多の11ゴールをあげたコートジボワール代表FWアマラ・ディアネ、フランスU-21代表のMFディディエ・ディガールの3人だ。

 このうちディアネとディガールは、メディアに経営陣を批判するコメントを発表、停職処分を受けた直後、放出が決まった。ディアネはカタールのアルラヤンに、ディガールはミドルスブラに移籍する。

 PSGは2人の移籍で獲得する1200万ユーロ(約20億円)を軍資金として補強作戦に弾みをつけたいところだが、レキップ紙などの情報によると、交渉が思うように進んでいないのが現状のようだ。現時点でまとまりそうなのは、昨季まで松井大輔のチームメイトだったDFマルコ・バシャとMFステファン・セセニョン(ル・マン)。それ以外では、リヨンのMFマチュー・ボドメールの獲得に動いているが、リヨンのピュエル新監督がリール時代に育てた選手だけに、手放そうとしない可能性が高い。

 補強の最大のポイントはパウレタ(引退)とディアネの抜けたストライカーとなるが、代表経験もあるレンヌのジミー・ブリアンに照準を絞っている。ブリアンは、移籍を認めないクラブに反発し、22歳にして「引退も辞さない」と練習への参加を拒んでいる。

 PSGにとってはいいニュースかも知れないが、レンヌのラコンブ監督から「所属クラブの意向を無視し、選手の心を掻き乱す強引なやり方」と批判を受けており、レンヌ側が移籍を認めるにせよ“PSG以外”で話をまとめようとする可能性もある。いずれにせよ、もともとよくないイメージがここへ来てさらに悪化するという事態は避けられない。